現地企業の台頭著しい中国の建機市場、日本勢は価格競争に巻き込まれてしまうのか
【新たな懸念】
建設機械業界では近年、中国事業で厳しい状況が続く。低価格を売りにした現地メーカーが台頭した上、需要の伸びが鈍化しているからだ。そこに新型コロナウイルス感染拡大という新たな懸念材料も加わった。建機各社は「脱・中国依存」を掲げるが、人口の多さや今後の経済成長を考えると決して無視のできない市場でもある。
経済成長に伴いインフラ整備や都市開発が進み、中国の建機市場は右肩上がりに成長してきた。さらに2008年のリーマン・ショック後、4兆元の景気刺激策を打ちだしたことで、中国市場は活況を呈した。ただそれが一段落すると需要は徐々に落ち込んだ。日立建機の調べによると、中国での油圧ショベル販売台数は10年度、15万8000台に達したが、15年度は3万6000台にまで急減。その後回復したものの18年度は日系を含む外資系メーカーが6万台にとどまったのに対し、中国メーカーが7万4000台。中国勢の台頭が著しい。そして19年に入ると、米中貿易摩擦で再び市場環境は悪化に転じてしまう。
【価格競争回避】
こうした逆風下で各社はどう戦っていくのか―。「中国ではやるべきことをやるだけ」(小川啓之社長)というコマツは、価格競争に巻き込まれない戦略を打ち出す。20トン以上の大型機種に限定して製品を投入。部品の現地調達率も引き上げ、走行モーターなどの部品を国内での生産に切り替えた。部品・サービスなど関連ビジネスも強化している。
日立建機は品質重視の製品を投入するとともに、エンジンオイルや作動油の状態を24時間遠隔監視するサービスの提供などバリューチェーン事業に注力。その一方で価格を意識した戦略も進め、2月から中国専用ミニショベルのテスト導入を開始した。都市化が進んできた中国でミニの需要拡大を見込むが「やはり価格重視の顧客が多い」(広報担当)という。同社の品質基準を満たした中国メーカー製部品を一部採用し価格を抑えた。
【中古に商機】
コベルコ建機は、自社でコントロールしていない中古建機も自社製であれば、メンテナンス対象とした。アフターサービスに注力している現地の販売代理店を選定し、街中で自社製中古建機を見かけたら、営業をかけるように促している。
もともと建機各社は中国市場に対し「もう一度(需要動向を)精査する」(平野耕太郎日立建機社長)、「全く読めない」(楢木一秀コベルコ建機社長)など慎重な姿勢を示していた。そこに新型コロナ感染拡大が起こった。ただ政府要請で2月に生産停止に追い込まれた各社とも、中国市場向けに生産する地産地消であったため、影響は中国事業に限定された。
それでも、最も販売が伸びる春節明け商戦が消えてしまうなど、厳しい市場環境は続く。この苦境をどう乗り越えられるか、注目される。