国産組と中国合弁シフト組に2分された造船業界。それぞれの一長一短

【連載・中国依存の功罪】コスト競争、合弁に活路

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川重は中国合弁会社の生産能力を増強して、将来の注文拡大に備える

【日本の危機】

造船業界は今治造船(愛媛県今治市)とジャパンマリンユナイテッド(JMU、横浜市西区)に代表される国産組と、川崎重工業と三井E&S造船(東京都中央区)に代表される中国合弁シフト組に大別される。今治造船とJMUは3月下旬、商船分野の設計・営業部門の共同出資会社「日本シップヤード」を10月1日付で設立すると発表。今治がJMUの株式の3割を持つことも決まった。「韓中との熾烈(しれつ)な争いの中で撤退する会社もあり、このままでは日本の造船が立ちゆかなくなる。日本を背負って行けるのは我々しかいないという思いで手を組んだ」。今治造船の檜垣幸人社長は提携の狙いを説明した。

この提携で、今治造船とJMUの新造船建造量の世界シェアは合計で約12%に達する。しかし韓国と中国の大手はその上を行く。韓国は世界首位の現代重工業と3位の大宇造船海洋、中国は2位の中国船舶工業集団と5位の中国船舶重工集団が経営統合を進め、シェアはそれぞれ約2割に達する。対して日本は中小造船所が乱立している状態だ。

【強い中韓】

「ガス船については中韓の追い上げが激しい中、コスト競争力に劣っている」。三菱重工業の泉沢清次社長は2月の決算会見で、コスト競争敗北への正直な感想を口にした。この思いは造船各社に共通だ。人件費、材料費に加え、中韓両国は統合による“規模のメリット”を有し、政府や当局による露骨な金融支援もある。「コストダウン努力で我々が追いついても、政府による支援で船価が新たに引き下げられている」。複数の造船大手は不透明性を指摘する。

川崎重工業と三井E&S造船はこうした業界の実情を背景に、国内コストダウン努力では限界があると見て、中国の企業と手を組む。川重の金花芳則社長は坂出工場(香川県坂出市)から液化天然ガス(LNG)運搬船の建造技術を供与して中国合弁企業で船を造れば韓国よりも安く建造できるとそろばんをはじく。コストの安い中国の利点をうまく活用すると同時に、中国国内の新造船需要も合弁会社で取り込んでいくとの考え方。三井E&S造船も同様の戦略を推し進めている。

【“砦”を守る】

とはいえ中国合弁企業の強化は、貴重な造船技術が中国へ流出しかねないリスクをはらんでいる。環境規制や省エネ技術、水素船など次世代船の建造。これらは中国へ渡すことのできない日本企業の“砦(とりで)”だ。JMUの千葉光太郎社長は「中韓と戦うための競争力のベースは技術力。その上で生産性や販売力、マーケティング力を高めていくことが必要だ」と処方箋を示す。

世界の新造船建造量は2010年ごろは1億総トン以上あったが、19年は船舶過剰が響き5000万総トン近くに半減している。コロナ感染が世界に広がり荷動きが止まれば、船舶需要はさらに減少し、価格競争の圧力は増す。国産組は造船所の閉鎖を含む大規模再編と合理化に踏み切れるのか。正念場に立たされている。

日刊工業新聞2020年4月15日

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