【新型コロナ】大苦境のLCC、大幅減便・就航延期で財務は大丈夫?
新型コロナウイルス感染症拡大を背景にした航空需要の減退が、国内格安航空会社(LCC)各社を直撃している。大手のジェットスター・ジャパンとピーチ・アビエーションは、ともに国際線で全便運休など大幅減便。日本航空(JAL)の中長距離国際線LCC新会社も就航を延期した。LCCは高い機材回転率と座席利用率で実現できるビジネスモデル。財務体力も決して盤石だといえない中、急激な市場縮小に直面し、生き残りをかける。(小林広幸)
国内線半減
フルサービスキャリア(FSC)大手の全日本空輸(ANA)とJALとも、国内線は計画比でほぼ半減している。LCCでもジェットスターは5月6日まで国内24路線のうち事実上、成田発着の幹線4路線のみ運航を継続。ピーチは4月末まで国内21路線のうち8路線を運休し、13路線は1日1往復に減便して路線を維持する。 国内線のLCCシェアは1割程度だが、存在感は日ごと増している。需要の多い幹線で価格競争力を発揮するだけでなく、路線網拡大が進み、地方と大都市や地方間を結んで、航空インフラの一翼を担うようになった。
座席利用最大化
LCCのビジネスモデルは、短い折り返し時間で機材を効率的に活用し、需要に応じた変動価格で座席利用を最大化することで成立する。LCCの輸送人キロあたり旅客収入はFSCの約半分だが、サービスを絞り、人件費や機材費といったコストを低く抑えて収益を確保している。 国内線座席利用率はFSC大手2社が70%台前半なのに対して、LCC大手2社は80%台後半。しかし、今回のような大減便下ではLCCビジネスの特性を発揮できない。
経営体力
LCCはラウンジなどの設備を持たず、人員も少ないため、市場変動の打撃はFSCに比べて軽いとも指摘される。ただ総じて、経営体力に余裕はない。
国内LCCの1社、春秋航空日本は21年度の営業黒字転換を目標に、経営改善に取り組んでいる。3月に公表した安全報告書によると、19年12月期は前年度に比べて赤字半減を達成したもよう。18年12月期は、45億円の営業損失を計上し、債務超過の状態だった。
一方、LCC大手2社は19年、それぞれ親会社との関係性を深めた。ANAホールディングス(HD)は傘下のLCCを再編してバニラエアをピーチ・アビエーションに統合、JALは連結子会社化こそしなかったが、ジェットスター・ジャパンへの出資比率を50%に引き上げた。いざという場合には、後ろ盾にもなりそうだ。