高齢者だけじゃない!乳幼児でも高まる「在宅医療」のニーズ
経済産業省が毎月公表している第3次産業活動指数の内訳系列の中に、医療業指数というものがある。医療業指数は、病院・一般診療所指数と歯科診療所指数からなり、どちらも右肩上がりで伸びている。この医療業指数を作成するために用いられている診療報酬点数の動向を社会医療診療行為別統計(厚生労働省)から年齢別、傷病別等詳細に見ることにより、医療の動きを追うことができる。
「在宅医療」という言葉を聞いたことがあるだろうか。在宅医療は診療報酬の分類として医科診療の中に含まれているが、体の機能の低下などにより通院が困難な方が、病院や診療所ではなく自宅などで受ける医療のことである。
先ほどの病院・一般診療所指数の元データでもある、医科診療の診療報酬点数を診療行為別に見てみると、2018年6月の医科診療全体のうち、在宅医療の割合は3.4%といまだ小さいものの、在宅医療の点数は、2008年から2018年の間に約1.8倍と大きく伸びている。これは医科診療の点数全体の伸び(約1.3倍)よりも大きく、右肩上がりの医科診療のなかでも特に在宅医療の需要が増えていることがわかる。
年齢階級別の伸びについては、在宅医療は0~19歳、20~39歳、75歳以上で2008年比2倍以上と大きく伸びているが、他の年齢階級でも増えており、年齢階級に関係なく需要が伸びていると言えそうだ。
2018年6月の在宅医療点数を年齢階級別の割合でみると、75歳以上が50%、次いで60~74歳が22%と、60代以上が72%を占めている。しかし、3割弱は60歳未満であり、0~19歳という若年層も8%ほどを占めている。
次に、年齢階級毎に、医科診療のうち在宅医療が占める割合をみると、2008年に比べて2018年はほとんどの年齢階級で伸びている。特に若年層における在宅医療の比率が高まっており、5~19歳の各層は、85歳以上の高齢者の在宅医療の比率と同程度、もしくは上回る割合にまで高まっている。
また、上の5~19歳よりさらに下の0~4歳の層でも、在宅医療の割合はいまだ小さいものの、その割合はこの10年間で大きく増えている。在宅医療費は、①在宅患者診療・指導料、②在宅療養指導管理料、③在宅療養指導管理材料加算、④薬剤料、⑤特定保険医療材料料から構成されている。
このうち、③在宅療養指導管理材料加算とは、在宅で療養する方が自宅療養に必要な医療機器を使用する場合などに算定される費用である。乳幼児は薬剤の量が少量で済むため、④薬剤料を除いた在宅医療点数のうち、③の割合が、0~4歳は60%と、他の年齢階級と比べても高く、人工呼吸器や酸素療法、経管栄養などの特別な医療ケアが必要な割合が高いことがうかがえる。
2018年6月に在宅医療を利用している乳幼児(0~4歳)の、主傷病の上位4分類は、「先天奇形、変形及び染色体異常」、「呼吸器系の疾患」、「内分泌、栄養及び代謝疾患」、「周産期に発生した病態」となっている。乳幼児の在宅医療の増加には、医療の進歩によって周産期などに助かる命が増えたことで、日常的に医療的ケアを必要とする子供が増えているという背景もあるようだ。