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新型コロナで関心高まる、遠隔医療の現在地

新型コロナで関心高まる、遠隔医療の現在地

兵庫医科大学は、身近な疾患を総合的に診療できる医師の養成に注力している

国内で少子高齢化や人口減少が進行する中、地域医療の充実に向けた取り組みが活発化してきた。新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、遠隔医療への関心も高まる。民間企業や大学、地方自治体などが知恵を出し合い、どこにいても必要な医療を最適な形で受けられる仕組みを構築する。人員配置の最適化やITの活用により医療従事者の働き方改革にもつなげ、質の高い安全な医療サービスの提供が目指される。(取材=大阪・中野恵美子)

「感染症のパンデミックを見据え、オンライン診療の基盤を整備しておくことが重要だ」と説くのは、沢田拓子塩野義製薬副社長。兵庫県養父市と地域医療の向上を目指し、連携協定を結んだ。同社が包括的な地域医療で自治体と連携するのは初めて。重症化リスクの低い地域住民向けにテレビ電話でインフルエンザ診療を始める。

国家戦略特別区域の同市で、特例により初診からオンラインが可能になったのは「大きな一歩だ」(沢田副社長)という。同社が注力する感染症領域において、医薬品の研究開発ノウハウを診療計画の実施や結果解析に生かす。テレビ電話で服薬指導も実施し、診療をトータルで支える。

兵庫県養父市と地域医療の向上を目指し、連携協定を結んだ(沢田拓子塩野義製薬副社長(右)と広瀬栄兵庫県養父市長)

透析治療向け医療機器を強みとするニプロは、ICT(情報通信技術)を活用した見守り支援システムを拡充する。在宅や高齢者施設において、同社医療機器を通じて測定した血圧や体温などのデータをリアルタイムで医師が共有する。緊急時には警報を通知するなど、遠隔で24時間患者の容体を管理できる。

1月から病棟向けシステムも提供を始めた。看護師が持つスマートフォンなど端末上で患者や医療機器の状態を確認し、データを電子カルテに集約できる。吉岡清貴常務は「医療現場の業務効率化だけでなく、遠隔での容体管理は感染症対策にも有効だ」と意義を強調する。

地域医療を支える人材育成も進む。兵庫医科大学ささやま医療センター(兵庫県丹波篠山市)では、身近な疾患を総合的に診療できる医師の養成に注力している。片山覚病院長は「プライマリーケア(総合医療)を専門技術として確立する」と方針を定める。臨床実習生や研修医は、患者の悩みに対し親身に応じる役割を学ぶ。

人口減少や高齢化が進む地域内において、医療資源の有効活用が欠かせない。このほど丹波篠山市内の医療法人と協定を結んだ。医師との診療協力や勉強会などを通じた人材交流のほか、高額な医療機器の共同利用、医学生の実習受け入れなどで連携していく。医療現場の負担を軽減しつつ持続的な地域医療の体制構築が求められる。

日刊工業新聞2020年3月24日

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