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有名医師を抱える心臓病の専門病院はなぜ倒産したのか

大崎病院、資金流出で経営悪化。ファクタリング手数料も負荷
有名医師を抱える心臓病の専門病院はなぜ倒産したのか

(写真はイメージ)

 心臓病専門の「大崎病院 東京ハートセンター」(以下、大崎病院)経営の医療法人社団冠心会は8月27日に民事再生手続き開始決定を受けた。冠心会は1994年3月に創業、同年9月に法人改組。2003年7月に遠藤真弘氏が理事長となり、05年12月に大崎病院を開院した。有名医師が所属するなど知名度は高く、開院から数年、約20億円だった年収入高は18年3月期で約41億100万円と約2倍に拡大した。

 経営が不得手な医師は多いが、遠藤理事長は経営には全く関与せず、妻で常務理事の夫人が実権を握っていた。だが、同氏も経営のプロではなく、07年には病院不動産オーナーへ家賃が遅延し、10年頃には同オーナーから2度も法的整理を申し立てられた。この頃すでに夫人の乱脈経営や資金流出が指摘され、破綻への兆しは表れていた。

 その後、病院不動産は別会社の手に渡り、同社にも昨年10月より家賃が遅延し訴訟へ発展。そして、今年4月に週刊誌で夫人の資金流用疑惑が報じられ、急速に信用が収縮、実権者不在となり大崎病院は壊滅的な状態へ陥った。

 5月には新規患者や新規手術の受け入れが停止となり、最低限の経費も足りない状況が続いた。そうしたなか、以前から利用していた診療報酬債権のファクタリングで、資料によれば、23年7月分までの診療報酬債権を譲渡していたという。ファクタリングなしには存続が不可能な状態になっていたが、一方で手数料の利率が高く資金繰り悪化の一因にもなった。

 最終的に、訴訟中のオーナーが不動産を売却した別会社が7月31日に冠心会に対して破産を申し立て、その後、冠心会が再建の意欲を申立債権者に伝えたことで、申立債権者が破産を取り下げ、同債権者が民事再生を申請しなおすという結果になった。開始決定後に理事長と理事が総入れ替えとなった冠心会。今後新たな医療法人主導の下、再建を図る。
(文=帝国データバンク情報部)
<概要>
医療法人社団冠心会
住所:東京都品川区北品川5―4―12
代表:遠藤真弘氏(民事再生申請時)
年収入高:約41億100万円(18年3月期)
負債:約42億6200万円
日刊工業新聞2019年10月1日

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