取引条件?経営の道しるべ?疑問だらけで始めるSDGs

雑誌『工場管理』新連載 町工場でSDGsはじめました 第1回 

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SDGsの17のゴールを示すロゴ
 最近、仕事や生活の場で「SDGs(エスディージーズ)」という言葉をよく見聞きするようになった。“持続可能な開発目標”と訳されるSDGsは、近年、企業にとって経営戦略上の重要目標となりつつある。生産現場においても例外ではないが、現場にとっての意義や価値は十分に理解されているとはいいがたい。本連載では、とある町工場の夕陽丘製作所のエピソードを通じて、SDGsとは何かから、取り組むプロセス、ポイントを解説していく。

2019年X月X日夕方、外出先から戻った古町工場長が、総務部にやってきた。イスを差し出しながら萬代総務部長はたずねた。

 萬代「工場長、取引先に行っていたはずですね。総務部に何か用ですか」
 古町「中越電器産業の役員から、“エスディージーズ”をやってほしいと言われたんだよ。萬代君、知っているか、エスディージーズ?」
 萬代「確か知っている大企業のホームページで見たことがあります。うちに“やってほしい”ってどういうことですかね?」
 古町「取組みを決めて、宣言してほしいって言うんだよ。まだ先でよいそうなんだけど、検討しておいてほしいそうだ。ところで、その企業のホームページは?どんな取組みをしてるんだ」

萬代総務部長はパソコンで企業名を検索した。「会社案内」「サステナビリティの取組み」と順番にページを開くと「SDGs達成に貢献します」と見出しのあるページが映し出された。「エスディージーズは『SDGs』のこと。そして国連が合意した『Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)』の略称がSDGs である」と書かれている。

 古町「なぜ、国連の目標に企業が貢献するんだ?」
 萬代「これってISOみたいなものですかね?」
 古町「私もISOの一種かと思ってね。だからSDGsも総務部の担当と思ったんだ。私は理系だし、萬代君、悪いけどSDGsについて調べてくれないか」

萬代総務部長の頭には浮かんだのは「ISO14001」だ。環境マネジメントシステムと呼ばれる国際規格で、以前も取引先に勧められて導入した。確かに節電、コピー用紙の節約、廃棄物の削減で成果があり、コストダウンができた。一方、規格通りに運用しているか審査を受けるため、費用もかかった。
 SDGsのアルファベット4文字に不安を抱きながらも、夕陽丘製作所のSDGsが始まった。

解説 「企業経営」に置き換えて読める/法的拘束力なし

SDGsは2016~30年までの世界共通の目標です。15年9月の国連総会で、世界193カ国が合意して決まりました。
 世界を見渡すと、地域によっては貧困、食料不足、不衛生な水などの問題があります。一方で気候変動、自然災害、資源枯渇のように、どの国・地域にも共通する問題もあります。これまでは別々に解決策が議論されがちだったこれらの問題を一緒に解決しようとするのが、SDGsです。理念として「経済・社会・環境の調和の取れた世界」を目指しています。
 SDGsでは、山積する問題を分野別に17に分けました。それが17ゴールズです。「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」と書かれたアイコン(絵文字)を見たことがあると思います。そのアイコンが17ゴールズです(図1)。また、各ゴールには「ターゲット」があります。ゴール達成のための「具体的な目標」が書かれおり、全部で169個あります。

古町工場長のように、取引先に言われてSDGsの勉強を始めた会社は多いと思います。そして、「なぜ、国連の目標に企業が貢献するんだ?」と疑問に思った人も少なくないのでは…。いろいろと理由はありますが、「SDGsは企業経営に置き換えて読める」ということがあります。たとえばターゲットには「人間らしい働き方」「女性のリーダーシップは男性と同等」「廃棄物を大幅に削減」などと書かれています。これって企業活動に当てはまることではないでしょうか。ターゲットは世界が合意したものであり、言い換えると「社会からの企業への要請」です。社会(働き方改革、女性活躍…)、環境(リサイクル、省エネ…)と次々とやってくる要請がSDGsにまとまっています。
 萬代総務部長の「これってISOみたいなものですかね?」の疑問にうなずいた人もいると思います。ISO14001は審査を受けて合格する必要がありますが、SDGsは認証制度とは違い、審査を受けなくても「SDGs達成に貢献します」と自己宣言できます。そもそもSDGsに法的拘束力はなく、取り組まなくても違反にはなりません。

参考として環境省の「SDGs活用ガイド」を紹介します。このガイドでは、SDGsを「企業経営の道しるべとなる」と紹介し、「ビジネスの世界での共通言語」と解説。さらに「取引条件になる可能性もある」と指摘しています。SDGsに取り組まないと、大企業から取引を打ち切られるかもしれません。
 SDGsの全文は外務省のWEBサイト「JAPAN SDGs Action Platform」に掲載があります。

ポイント
●SDGsとは、国連が決めた2030年までの世界共通目標。世界中の課題を17分野(ゴールズ)に整理し、具体的な目標となる169ターゲットを決めた
●各ゴールのターゲットは「企業経営」に置き換えて読める
●取組みの開始は自己宣言でよい

松木 喬(まつき たかし)
日刊工業新聞社 第二産業部 記者、編集委員
2009 年から環境・CSR・エネルギー分野を取材。現在、日刊工業新聞「SDGs面」(毎週金曜)の取材・編集を担当。主な著書に『SDGs 経営“社会課題解決”が企業を成長させる』(日刊工業新聞社)。新潟県出身。
工場管理 2020年1月号  Vol.66 No.01
【特集】
【1】検証 モノづくりIoTの今とこれから
【2】データ分析のスキルアップ!?QC7つ道具活用術
 モノづくりにおいてIoTは今や一大ビジネスと化しているが、多くの製造業でIoTを導入し、実用に至っているのだろうか。【特集1】では、IoTの牽引役や現場指導をする有識者の見解と企業事例をもとに、IoT活用の現状と展望を伝える。そして、IoTで多くのデータを収集できるようになった今、データの分析・活用のスキルが求められている。【特集2】では品質管理の問題解決手法として用いられる、グラフや特性要因図などの「QC7つ道具」の基礎と実践事例を解説。IoT時代に見合ったQC7つ道具の活用方法を紹介する。

雑誌名:工場管理 2020年1月特別増大号
判型:B5判
税込み価格:1,870円

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※第2回は1月25日頃公開予定

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

同僚に原稿を見せたら、萬代総務部長の「ISOみたいなもの」という言葉に共感してもらいました。ISO的なものと思う方が多いですよね。それに「どこかに登録するの?」とも質問を受けます。その必要もありません。こういった質問、そして「なぜ取り組む必要があるの?」という疑問の答えとなる連載を目指します。

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