SDGs推進の鍵は「チーム」と「勉強会」にあり!

雑誌『工場管理』連載 町工場でSDGsはじめました 第4回

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 最近、仕事や生活の場で「SDGs(エスディージーズ)」という言葉をよく見聞きするようになった。“持続可能な開発目標”と訳されるSDGsは、近年、企業にとって経営戦略上の重要目標となりつつある。生産現場においても例外ではないが、現場にとっての意義や価値は十分に理解されているとはいいがたい。本連載では、とある町工場の夕陽丘製作所のエピソードを通じて、SDGsとは何かから、取り組むプロセス、ポイントを解説していく。

取引先に言われSDGsに取り組むことになった夕陽丘製作所。古町工場長から担当者に任命され困惑していた萬代総務部長は、SDGsに精通する燕さんと活動を本格始動させることになった。

 燕「今日の午後、SDGsのセミナーがあるんです。一緒に行きませんか?」
 萬代「つい数日前、SDGsを知ったばかりの素人の私が行って大丈夫なのか?」
 燕「長岡銀行が取引先を集めた勉強会です。それに講師も地元の企業の方なので、堅苦しいものじゃないですよ」

こうして2人はセミナーに出かけた。翌朝、2人は総務部内で前日のことを振り返った。

 萬代「昨日のセミナーは市内の工場の部長たちが多くて驚いたよ。みんな『SDGsって聞いたことはあるけど、何をしたらいいんだ』って悩んでいた」
 燕「そうですよ。取組み事例を発表した講師の企業の方も言ってたじゃないですか。『考えてばかりでは始まらないから、まずはやってみた』って」
 萬代「そうだな。まずは従業員向け勉強会をやろう。講師の方と名刺交換したら、うちの勉強会でも講師をしてくれるって言ってくれたよ」
 燕「部長、積極的ですね。その前に社内チームを結成しましょう」
 萬代「そうだった。で、メンバーはどうする。古町工場長、製造部長、営業部長……」
 燕「それだと経営会議と一緒じゃないですか。どうせ各部署から選抜するなら、若手にしましょうよ。思い切って立候補はどうですか?」
 萬代「え、大丈夫か……?」

数日後、各部署からの立候補で集まった総勢8人のメンバーで夕陽丘製作所のSDGs推進チームが立ち上がった。20代30代が中心で、そのうちの半分は女性社員という構成だ。



<解説 興味のある従業員有志によるチームを結成し、形骸化を防ぐ>

企業向けのSDGsセミナーが多く開かれています。

企業向けのSDGsセミナーの様子

東京では数日おきといってもよい頻度ではないでしょうか。地方でも地銀や経済団体によるセミナーがあります。筆者の印象では、地元の環境保全団体の主催が多いように感じます。

セミナーの内容はそれほど難解とは感じられません。実際に聴講すると、すでに何らかの取組みを始めた企業の担当者が講師を務め、事例を発表するスタイルが目立ちます。参加費は無料、あるいは資料代程度というものが多いようです。

各地のセミナー情報をwebサイトに掲載している団体があります。あくまで筆者が知る範囲ですが、以下に記しますので参考にしてください。

・ESD活動支援センター
・地球環境パートナーシッププラザ
・グリーン購入ネットワーク

活動開始に当たって、従業員にSDGsを紹介する社内勉強会を開く企業が多く見られます。他社のSDGs担当者に講師をお願いした企業ほど、満足のいく会になっています。同じ企業人の目線で説明するため、経営者や従業員にSDGsの効果が伝わりやすくなります。

社内チームの結成も多くあります。燕さんと同様、筆者も有志によるチーム編成をおすすめします。興味ややる気のある従業員が参加したほうが活動は活発になり、形骸化を防げるはずです。特定の部署を担当にすると、その部署任せになりがちで他の従業員に参加意欲が湧きません。

日比谷アメニス(東京都港区)は従業員500人ほどの造園業の企業ですが、CSR部はありません。工事部の課長や現場社員10人ほどで委員会を立ち上げ、SDGsの取組み方を検討しました。メンバーは勉強会に出かけて関連情報を収集し、建設業者や取引先、先進的といわれる企業のホームページを見て学習したそうです。自分たちで勉強したのでSDGsが定着しやすいと思います。

逆に「押しつけ」だと、社員から反発などが生まれます。ある大企業の営業部の方が、筆者に悩みを打ち明けてくれました。CSR部がSDGs推進部隊なのですが、あらかじめ決められた活動を要求してくるので「営業とSDGsは遠い」と感じるそうです。SDGsは誰でも参加できる活動なのに残念です。

有志チームだと部署を越えた連携も期待できます。総務、経理、営業、生産など違う部署が同じテーマで話し合える機会です。ある県庁を取材した時、「SDGsが部・局を越えて政策を考える視点を与えてくれた」と語っていました。

ポイント
●企業事例を学べるSDGsセミナーに参加する
●社内勉強会の講師は他社のSDGs担当者に依頼すると社内で共感を得やすい
●部署間の連携が期待できる社内の推進チームを結成する

松木 喬(まつき たかし)
日刊工業新聞社 第二産業部 記者、編集委員
2009 年から環境・CSR・エネルギー分野を取材。現在、日刊工業新聞「SDGs面」(毎週金曜)の取材・編集を担当。主な著書に『SDGs 経営“社会課題解決”が企業を成長させる』(日刊工業新聞社)。新潟県出身。

工場管理 2020年4月号  Vol.66 No.5
【特集】 未来を担う人材を底上げ! 次世代現場リーダー育成 7つの秘訣

少数の部下を持ちつつ自らも業務を行う現場リーダーは、企業の未来を担う重要な存在だ。しかし、その育成については特に中小企業では従業員の自助努力による成熟に期待するケースは多く、経営者や管理監督者が意識的に育てようとしてこなかった問題があった。今後、経営者や管理監督者は従業員に積極的に働きかけて素質を伸ばし、現場リーダーの地位まで引き上げるための術を身につけ、実行しなければならない。 特集では、モノづくり現場の今後のさまざまな環境変化を見据え、これからの現場リーダーに求められるスキルの中で特に重要なものを7つ厳選。これらのスキルを備えた「次世代現場リーダー」を経営者や管理監督者が育てるための秘訣を解説する。


雑誌名:工場管理 2020年4月号
判型:B5判
税込み価格:1,540円

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※第5回は4月25日頃公開予定

雑誌「工場管理」

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

新型コロナ感染防止のため、SDGsの勉強会の中止が相次いでいます。落ち着いたら地域の勉強会を確認し、参加してみて下さい。2月開催の地方での勉強会に参加しました。東京のセミナーだとCSR専門家の聴講が多くて質問も専門的ですが、地方は経営者などが多く「こういうことが疑問なんだ」とうなずけます。現場レベルの悩みを共有できる良い機会です。

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