SDGsで営業力アップ!新たな取引先獲得も

雑誌『工場管理』連載 町工場でSDGsはじめました 第2回

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 最近、仕事や生活の場で「SDGs(エスディージーズ)」という言葉をよく見聞きするようになった。“持続可能な開発目標”と訳されるSDGsは、近年、企業にとって経営戦略上の重要目標となりつつある。生産現場においても例外ではないが、現場にとっての意義や価値は十分に理解されているとはいいがたい。本連載では、とある町工場の夕陽丘製作所のエピソードを通じて、SDGsとは何かから、取り組むプロセス、ポイントを解説していく。

前回からの登場人物
萬代総務部長:工場長の指示でSDGsの情報を収集中。ISO14001を構築した経験も。52歳。
古町工場長:取引先の役員からの話でSDGsに興味を抱く。理系大出身の59歳。


取引先の中越電器産業から「SDGsに取り組んでほしい」と言われた夕陽丘製作所。古町工場長から「SDGsを調べておくように」と頼まれた萬代総務部長が数日後、工場長の部屋を訪ねた。

萬代「SDGsについてわかったことを報告します。法的な拘束力はなく、取組みは義務ではありません」
 古町「じゃあ、どうして取り組む必要があるんだ」
 萬代「環境省のホームページで見つけた『SDGs活用ガイド』に地域企業が取り組む理由が書かれています」

総務部長は印刷したSDGs活用ガイドを工場長に手渡した。他にも総務部長の手元には関連する資料がある。どれも無料で入手したものばかりだ。

萬代「『多様性に富んだ人材の獲得』『経営リスクの回避』『新たな事業機会の創出』『新しい取引先や事業パートナーの獲得』といったポイントがあります」
 古町「SDGsで取引先が増えるということか。いいじゃないか、早速、取り組もう」
 萬代「それが決まった取組み方はなく、自由に進めていいんです。その割に手間のかかりそうなことが多そうで……」
 古町「何だと。中越電器産業さんからも言われているんだ。至急、検討してくれ」

萬代総務部長はため息をついて席に戻ると、入社3年目の燕さんが目を輝かせて近づいてきた。

「SDGsの資料をたくさんお持ちですが……もしかして、うちの会社も何か始めるんですか。実は先日、長岡銀行の方からSDGsについて教えてもらったんです」
 萬代「本当か!一緒にSDGsの取組み方を考えてくれないか」

こうして夕陽丘製作所ではSDGsの進め方を検討することになった。


<解説 企業の環境・社会貢献にスポットライト>

環境省の『SDGs活用ガイド(図)』は、地域経済を支える中小企業の目線からSDGsを紹介しています。また、導入の手順や中小企業の導入事例の掲載もあり、入門書としておすすめです。

このほか、インターネット上から無料で入手できる参考書もあります。グローバル・コンパクトネットワーク・ジャパンのホームページにある「SDG Compass」もその1つで、導入手順を5ステップで紹介しています(理解する→優先課題を決定する→目標を設定する→経営へ統合する→報告とコミュニケーションを行う)。内容としては海外企業とも取引をする大企業向けの印象です。経済産業省が取りまとめた『SDGs経営ガイド』も大企業向けでしょうか。どちらも目を通しておくと、自社の取引先である大企業がSDGsに取り組む理由が見えてくるかもしれません。夕陽丘製作所の場合、中越電器産業の意図を理解できるのではないでしょうか。

ここで工場長が敏感に反応した「新しい取引先や事業パートナーの獲得」について、事例を交えて解説しましょう。横浜市にある大川印刷は「SDGsに取り組む会社」として有名になり、2018年度だけで50社以上の新規取引先を獲得しました。従業員40名の中小企業が1年間で50社以上もの新しい顧客と取引ができるのは、すごい営業効果と思います。

同社は以前から再生可能エネルギーの活用、健康被害が少ないノンVOCインクの利用、違法伐採ではない森林資源を原料とする印刷用紙の導入など、徹底的に「環境配慮」にこだわってきました。また、病院などで言葉の壁を感じる外国人向けの4カ国語のお薬手帳、目の不自由な人でも文字が読みやすいユニバーサルデザイン採用の卓上カレンダーなど、社会にも貢献できる製品を提案してきました。

こうした環境・社会を意識した経営が、SDGsによって大きくスポットライトを当てられました。「SDGsに取り組む大川印刷とは安心して取引できる」と確信した企業から次々と注文が飛び込んできたのです。

18年末には政府がSDGsの先進的な活動を表彰する「第2回 ジャパンSDGsアワード」で特別賞に選ばれ、大川印刷の知名度は全国区になったといえます。営業的にも大きな宣伝効果があったはずです。ちなみに前述の『SDGs活用ガイド』(冊子版)の印刷も、大川印刷が担当しました。

環境・社会に貢献し、その活動が世間から評価されて売上向上にもつながることは、良いサイクルだと思います。SDGsが認知されたことで、企業の環境・社会への配慮が一躍注目されるようになりました。

展示会でもSDGsを活用したPRが目立つ
ポイント
●無料で入手できる入門書・解説書が豊富
●従来、環境・社会に貢献してきた企業経営がSDGsによって脚光を浴びた
●環境・社会貢献が営業・宣伝効果になる

松木 喬(まつき たかし)
日刊工業新聞社 第二産業部 記者、編集委員
2009 年から環境・CSR・エネルギー分野を取材。現在、日刊工業新聞「SDGs面」(毎週金曜)の取材・編集を担当。主な著書に『SDGs 経営“社会課題解決”が企業を成長させる』(日刊工業新聞社)。新潟県出身。

工場管理 2020年2月号  Vol.66 No.03
【特集】2020年を勝ち抜く!経営者・管理監督者のための問題解決キーワード50
モノづくりを取り巻く環境は刻々と変化しており、特に製造業における人手不足は深刻化している。一方で、働き方改革が提唱され、従業員雇用や労働のあり方・価値観の変化、法改正の波が押し寄せつつある。企業経営のうえでは、こうした環境変化を敏感にキャッチして、次なる一手を早期に打つことが求められている。特集では、「人手不足」「働き方改革」「生産性・自動化」「環境」「経営・品質」の企業が取り組むべき5つの課題解決のためのキーワードを厳選し、要点をわかりやすく解説する。


雑誌名:工場管理 2020年2月号
判型:B5判
税込み価格:1,540円


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※第3回は2月25日頃公開予定

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

インターネットで「SDGs」と検索すると、解説するサイトがたくさんヒットします。なので情報収集は苦労しません。私のお薦めは環境省の「SDGs活用ガイド」です。経営者がSDGsの考え方を理解するには「企業と人間社会の持続的成長のためのSDGs」(経済同友会)、 SDGsを活用して社会に情報発信する時は「エコマークとSDGs」(日本環境協会)が参考になるでしょう。

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