【一覧掲載】ドコモは5Gでどんな用途開拓を狙うのか

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移動診療車からの高精細映像を和歌山県立医科大学が確認した

NTTドコモは2019年10月から今月まで、37の自治体・企業・大学と協力し、第5世代通信(5G)を用いた12件の実証実験を行った。総務省の5G総合実証試験の一環。遠隔診療や、運転席から死角となる場所の映像確認など、高精細映像を即時伝送できる5Gサービスの性能を確認した。月内の5G商用化を控える中、高齢化や人手不足という日本の社会課題解決の“切り札”として、早期の実用化が待たれる。(取材=編集委員・水嶋真人)

【目の前の感覚】

遠隔診療では、山間部の日高川町保健福祉センター(和歌山県日高川町)に派遣した移動診療車内の高精細カメラ映像や医療機器の出力画像を5G経由で和歌山県立医科大学(和歌山市)に伝送。この映像を基に同大学病院の医師が診療所の医師と連携しながら診療する実証を行った。

5Gは現行の4Gと比べて、データ通信速度が最大100倍となる1秒当たり10ギガビット(ギガは10億)、伝送時の遅れが10分の1となる1ミリ秒(1000分の1秒)を実現する。同大学病院の医師は「5Gで高精細映像が届くため、目の前で見ているかのような感覚で診察できる」と話す。

【死角を映像で】

前橋市などとは、救急車に搭載した5G装置を用いて、車内の高精細カメラ映像をドクターカーや救急指定病院、かかりつけ医へ一斉配信する実証を行った。4Gでは難しかった高精細エコー映像や心電図の伝送が可能であると確認。救命救急医が傷病者の容体を迅速に確認し、適切な医療措置を準備できる。

5Gで労働安全を確保する実証も行った。愛媛県今治市の浅川造船で行った実証では、クレーンの玉掛作業時に死角となる場所の映像を、5Gで運転席のディスプレーに送信。死角の確認に加え、つり下げた荷物の重心も確認できた。

大分県では熱を検知するサーマルカメラと4Kカメラを搭載した車両からの映像を5Gでクラウド上の画像解析用人工知能(AI)に伝送し、視界不明瞭な濃霧の中でも前方車両などの障害物をフロントガラスのヘッドアップディスプレーに映し出した。

IDCジャパン(東京都千代田区)によると、国内の法人向け5G関連IT市場規模は2026年に1436億円となる見込み。ただ、5Gの普及拡大にはサービス提供エリアの早期拡大やコストの低廉化、対応機器の拡充、遠隔操作の安全性に関する法制度の整備などが必要で、市場拡大に「やや時間を要する」とみる。

【1万局を設置】

NTTドコモは21年6月までに5G基地局を1万局設置する見込みだが、5Gで集めた膨大なデータを解析する対応機器やAIを開発する複数の産業界との連携が5G普及迅速化には不可欠。政府による5G普及支援策にも注目が集まる。

日刊工業新聞2020年3月18日

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