宇宙・成層圏に基地局設置を競う携帯大手、何に活用する?

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AST&サイエンスへの出資を発表した楽天の三木谷浩史会長兼社長

携帯通信大手が宇宙や成層圏に通信基地局を設置して通信不通エリアをなくす研究開発に乗り出している。ソフトバンクは2023年にも成層圏を飛ぶ無人航空機を通信基地局として運用する事業を始める。NTTドコモも同事業を始める検討に入った。楽天は衛星通信網に既存のスマートフォンから直接接続できる技術を持つ米企業に出資した。第5世代通信(5G)の商用化で携帯通信の役割が高まる中、災害時の通信維持手段としての活用も見込む。(取材=編集委員・水嶋真人)

ソフトバンク傘下のHAPSモバイル(東京都港区)は、太陽電池を用いて上空2万メートルの成層圏を時速110キロメートルで長期間周遊できる無人航空機「ホーク30」によるHAPS(高高度疑似衛星)の事業化を目指す。1機当たり直径200キロメートルの地域に4Gや5Gを提供できる。

米アルファベット傘下のルーンとホーク30搭載用の通信機器(ペイロード)を共同開発した。最大700キロメートルの距離間の通信で1秒当たり最大1ギガビット(ギガは10億)のデータ通信速度が可能になる。

NTTドコモも太陽光発電で成層圏を100日以上飛べる欧エアバスの無人航空機「ゼファー」を用い、インフラ整備が困難な陸海空で5G級の通信環境を提供するHAPS事業の検討を始めた。上空を飛ぶ飛行ロボット(ドローン)の制御や航空機内での高速通信サービスの提供、山岳での遭難者探索や害獣監視などへの活用を見込む。

楽天は、米AST&サイエンス(テキサス州)に20%出資した。ASTは低軌道人工衛星(LEO)からの衛星通信網と既存のスマホを直接接続できるサービスの提供を目指しており、英携帯大手のボーダフォンからも出資を受けている。特別な衛星通信機器を使わずに衛星通信網と地上の携帯通信網をローミング(相互接続)でき、データ通信料も地上の携帯通信間のローミング料と同程度で提供可能という。

国内でも月内に商用化される5Gで高速大容量通信や同時多数接続が実現すれば、携帯通信は生活により不可欠な存在となる。通信不通エリアをなくし、災害時の通信復旧を迅速化できる高高度飛行体を用いたインターネット通信の重要性も高まるが、各国の規制当局への働きかけや仕様の標準化が普及に不可欠と言える。

HAPSモバイルとルーンは、エアバスや中国電信(チャイナテレコム)など計12社が参加した「HAPSアライアンス」を設立してHAPS技術の標準化に乗り出すが、通信や航空、電子機器など業界を横断した世界規模での産学官連携の拡大が待たれる。

日刊工業新聞2020年3月5日

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