トラブル相次ぐ楽天、事業拡大に黄信号
楽天で携帯電話料金の誤請求をはじめとしたトラブルが相次いでいる。格安スマートフォン顧客に対して月額料金の消費税率を誤って計算して請求。自社回線を持つ移動体通信事業者(MNO)として10月から試験提供している携帯電話サービスでは、料金請求に関するメールを誤って配信したことが発覚した。主力のインターネット通販だけでなく、通信などへ事業を拡大する楽天の成長に黄色信号が点灯しかねない。(取材・大城蕗子)
【料金計算ミス】
楽天傘下の楽天モバイル(東京都世田谷区)は格安スマホの通話サービスで、9月利用分の月額料金の消費税率を10月以降の10%で一部顧客に誤って請求したことが分かった。原因について楽天は「人為的ミスにより税率計算を誤った」(広報)としている。
12月1日には、MNOとして5000人に人数を絞って試験提供している「無料サポータープログラム」の一部利用者に対し、料金請求に関するメールを誤って配信した。無料サポータープログラムは国内外への通話やデータ通信を無料提供するが、一部有料のオプションも設けている。
楽天モバイルは有料オプションを利用してない人と、利用しているがすでに支払いが完了した人に対し「料金の引き落としができない」といったメールを誤配信した。楽天は「メール配信のシステム上のトラブルがあった」(同)と説明に追われた。
【センター障害】
さらに3日、未発表のMNOの料金プランとみられる画像がネット上に流出。画像では「50ギガバイト900円」など競合他社よりもかなり安い価格が掲載されていた。画像内容は事実でないとし、一連のトラブルについて「確認フローや開発フローを都度見直して改善していきたい」(同)とした。
携帯電話事業以外では、11月にデータセンターの障害が原因でクレジットカード「楽天カード」やスマホ決済「楽天ペイ」の一部機能が使えなくなる事態も起こした。
IT調査会社、MM総研(東京都港区)の横田英明常務は「MNOとして携帯電話事業に参入するなど挑戦する楽天だが、その成長スピードに社内整備が追いついていないのでは」とみる。
【基地局整備遅れ】
もともと楽天は10月にMNOとして携帯電話サービスを始める予定だったが、基地局整備の遅れなどで本格展開を2020年春に延期した。現在ネット通販「楽天市場」といった他事業の人員を携帯電話事業に振り向けるなどし、グループ一丸で取り組んでいるという。
楽天がMNOとして携帯電話サービスを始めるとさらに巨大な顧客基盤やデータを扱うことになり、社会的責任もより大きくなる。高い信頼性が求められる事業領域だけに、トラブルが続けば今後の成長も疑問視されかねない。