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大阪万博会場“夢洲”までのアクセス、このままで大丈夫?

開幕まで5年。インフラ整備議論は最終局面

2025年「大阪・関西万博」会場となる夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)へのアクセスをめぐる論戦が白熱している。25年日本国際博覧会協会は現状のインフラだけでは不十分として、新たな橋の建設を含む交通網の整備を大阪市に要望。一方で市は橋の建設を不要とし、「淀川左岸線」の工期前倒しやソフト面での対策で対応をはかる考えだ。万博の開幕まで5年。夢洲のインフラ整備は議論の最終局面を迎えている。(大阪・大川藍)

【上振れ指摘も】

「アクセスをきっちりつくるには納期がある。2800万人で本当にいいのか」。関西経済連合会の松本正義会長は会場インフラの議論停滞に懸念を示す。2800万人と試算される来場者数は05年「愛・地球博」の実績である2200万人を元に政府が算出。1日当たり最大で28万5000人、ピーク時には1時間当たり5万9000人が夢洲を訪れる見通しだが、経済界からは上振れの可能性を指摘する声も上がる。

【新たな橋要望】

25年万博協会は災害時を想定した需要予測などのさまざまなデータを示すとともに、新たな橋の構築を含むインフラ整備を府市に要望する。市は海上航路への悪影響や財政支出増などを理由に橋の建設を否定する一方、市の中心部と夢洲周辺をつなぐ自動車専用道路「淀川左岸線」の工期を2年早め、万博に間に合わせたい考えだ。

夢洲へのアクセスは舞洲(まいしま)(大阪市此花区)から架かる「夢舞大橋」と咲洲(さきしま)(同住之江区)とを結ぶ「夢咲トンネル」のほか、万博開幕までに大阪メトロ中央線の延伸が計画されている。鉄道やシャトルバスなどを最大限利用した交通量は1日当たり28万5000人で、「現状では試算ぎりぎり」(協会関係者)だ。

時間帯によってチケットの価格を変える混雑緩和策や高速船の運航など、ソフト面での対策も検討されてはいるものの、インフラの脆弱(ぜいじゃく)さを補うには厳しいと関係者はみる。建設期間を考えればハード面の議論を行う時間はあまり残されておらず、関係者が調整を急ぐ。

日刊工業新聞2020年2月25日

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