伝統の研究所にもメス、ホンダ「四輪改革」の実利と理想
4輪事業の運営体制を4月1日付で刷新するホンダ。ホンダの「四輪事業本部」が主体となる形で、研究開発子会社の本田技術研究所の商品開発機能などを移管する。営業・生産・開発・購買の各領域の運営を一体化し効率化を図る。一方、本田技術研究所は先進領域の開発に集中し、新たな技術や事業の創造力を高める。
ほかに4輪事業の運営体制の変更では、ホンダの生産、購買、事業管理の各本部における4輪機能や、子会社のホンダエンジニアリング(栃木県芳賀町)の生産技術開発機能などをホンダの四輪事業本部に統合する。生産、購買の両本部は解消し、ホンダがホンダエンジを吸収合併する。本田技術研究所の人員は約1万人だが、異動対象人数は非公開。
ホンダは4輪事業の低収益性が課題で2018年度の同事業の営業利益率は1・9%にとどまった。かつては本田技術研究所が商品開発と先進技術開発の両輪を担うことで優れた製品を生み出す好循環があった。
しかし近年、地域ごとの需要を捉えた車づくりがより一層重要となったほか、自動運転など従来の延長線にない技術開発が活発化。4輪事業が営業、生産、開発、購買の各領域で分けられていることによる非効率が目立ってきたという。そこで事業運営を一体化し「良い製品を効率的に迅速につくれるようにする」(担当者)。
本田技術研究所の組織運営体制も刷新する。傘下の「先進技術研究所」に新たに知能化、自動運転などの分野を追加する。4輪事業の商品開発を切り離すことで「先進分野に集中できる体制を整える」(同)という。
4輪事業、本田技術研究所の体制変更と併せて、コネクテッドやMaaS(乗り物のサービス化)などの次世代サービス分野を担う体制も変更。ホンダ全体で同分野をカバーする「モビリティサービス事業本部」を新設し事業化を加速する。従来は各事業ごとに機能が分散していた。
日刊工業新聞2020年2月19日
新型「アコード」は改革の先兵?
ホンダは20日、中型セダン「アコード=写真」を約6年半ぶりに全面改良し21日に国内発売すると発表した。基本構造から見直した新型プラットフォーム(車台)を採用し、走行安定性と乗り心地を高めたという。また広い室内空間を確保した上でデザイン性を高めたという。日本で販売するアコードとしては初めてタイの工場で生産し逆輸入する。
新型アコードは10代目で、日本より先に17年から米国や中国などで販売する。同日会見した寺谷公良執行役員は「ホンダのセダンを象徴するコアモデル。ドイツ車のユーザーにも訴え、新たな顧客を開拓したい」と話した。価格は465万円(消費税込み)。月販計画は300台。
ハイブリッド車(HV)仕様で燃費は1リットル当たり22・8キロメートル(WLTCモード)。先進安全運転支援システム「ホンダセンシング」を標準搭載した。
生産を国内からタイ工場に切り替えたことについて寺谷執行役員は、「タイ工場の品質レベルは上がっており、国内工場と比べても遜色ない」と説明。開発責任者の宮原哲也本田技術研究所主任研究員は「本質を見極める人に自信を持って薦められる」とアピールした。