株価が右肩上がりのカシオ、社長が最も気にかける事業はスマートウォッチ
―2019年度に初の中期経営計画が始動しました。これまでの進捗(しんちょく)は。
「上期を終えて株価が(19年の)年始のおよそ倍になり、業績も売上高以外は目標を達成した。各社が苦戦する中で結果を出せたことが自信につながっている」
「(電子辞書や楽器など)収益改善事業については、期初までに実施した構造改革の効果で19年度計画の営業利益率1%の達成はほぼ確実。ただ、踏み込んだ改革がまだできていない。効率を上げることができれば5%、10%もいける。開発・生産体制や調達、販売も時計以外はまだ最適化されていない」
―時計事業は中国市場の好調が目立ちます。
「流通網の開拓を意識したイベントを中国で始めたのが3年前。他国に比べると遅いスタートだが、だからこそ(電子商取引〈EC〉や会員制交流サイト〈SNS〉活用で)売り方が旧態依然にならず新たなユーザーに価値を提案できた。(今の中国経済は)消費の動き方こそ鈍化しているが仕掛けはしている」
―20年の課題は。
「1番はスマートウオッチ。絶対成功させたいが、かっこよさだけでは売れない製品。走るためのスマート専用機をアシックスと作っているが、米ガーミンに対抗できる本物でなければならない。収益改善事業はユーザー目線の製品作りや売り方への移行が課題だ」
―皮膚科向けのダーモカメラといった新規事業は順調に進んでいますか。
「進捗はまあまあだが、この先資金がどれほど必要になるかが不安要素。中計は(新規事業で)21年度に売上高200億円以上を目標にしているが、収益性を重視しなければならない。従来は前年より高い目標を立てるだけだったが、勝ち続けられる領域を見定めることが重要だ。(18年に)撤退した民生用デジタルカメラ事業も、ライセンスやモジュールの供給など新たなビジネスへのつなぎ留めができている」
―働き方改革について計画はありますか。
「テレワークや副業など検討テーマはあるが、まだ進展していない。社員の士気を1人残らず高めることが働き方改革の最低条件。彼らが望むことと会社が社員に期待することを最短で結んでいく」
【記者の目/好調期に抜本的改革探る】
「G―SHOCK」が好調な今だからこそ抜本的な改革が重要という。需要が比較的安定している事業ほど、慣習や既成概念の打破は一筋縄ではいかない。確固たるブランド力を築いた腕時計の成功体験を他事業でどこまで再現できるかが中計のポイントになりそうだ。(国広伽奈子)