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「日産・ルノー・三菱自」の新しい協業戦略はうまくいく?開発分野ごとにリーダー役

「日産・ルノー・三菱自」の新しい協業戦略はうまくいく?開発分野ごとにリーダー役

左から日産の内田社長、ルノーのスナール会長、三菱自の加藤CEO

日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の3社連合が、協業戦略で新機軸を打ち出した。開発の各分野ごとに主導役を決める「リーダー・フォロワー」と呼ぶ概念を導入したのが特徴。これまで3社連合は各部門で事業運営を一体化する機能統合を進めたが、かえって非効率を招くケースが発生したため戦略を転換する。3社はリーダー・フォロワーの原則を取り入れて中期経営計画を策定し、5月をめどに公表する計画だ。

3社連合は1月30日、横浜市の日産本社で意思決定会議「アライアンスオペレーティングボード(AOB)」を開き、リーダー・フォロワーの導入を決めた。この新戦略では、改めて3社の強みを再評価し、開発の各分野ごとにリーダーを1社決め、ほかの2社を支援する。地域ごとの事業運営にも同様の考え方を取り入れ、例えば中国は日産、欧州はルノー、東南アジアは三菱自がリーダーになる。三菱自の益子修会長は「東南アジアでは歴史的に強く、ブランド力もある当社が参照モデルになる」と話す。ほかの分野については評価作業中だが、電気自動車(EV)は日産、小型車はルノーといったようにリーダーが決まっていくとみられる。

1999年に資本提携した日産とルノーの協業の歴史は古く、01年には共同購買会社「RNPO」を立ち上げ、その後、10数年にわたり成果を上げてきた。その雲行きが怪しくなったのは、連合トップを務めたカルロス・ゴーン被告が主導して14年に打ち出した機能統合だ。対象分野は研究・開発、生産技術・物流、購買、人事、アフターセールスなどに広がり、18年には三菱自も加わる方針を示した。

しかし機能統合は、特に開発や生産では「各プロジェクトで日産式かルノー式のどちらを採用するかでもめるケースが出た」と日産OBは証言する。ルノー暫定CEO(最高経営責任者)のクロチルド・デルボス氏も「各社間の調整だけで仕事が増えてしまった」と非効率を招いた弊害を認める。

こうした反省から3社連合はすべてを一体化する機能統合とは事実上決別する。リーダー・フォロワーでは、「案件によっては各社が個別に手がけるケースも出てくる」(日産関係者)という。協業範囲はボディー分野などに広げる。ルノーのジャンドミニク・スナール会長は「アライアンス(企業連合)にとって大きなステップ」と話す。

自動車産業は電動化や自動運転などの進化で変革期にあり、「仕事の進め方も変えないといけない」(内田誠日産社長兼CEO)というのは業界の共通認識だ。厳しい環境下で、スナール会長は「アライアンス強化以外に選択肢はない」と繰り返し強調する。ルノー・日産との資本関係見直しについては「今の優先課題ではない」と明言する。まずはスピード感を持って協業の戦略転換を進め、各社の競争力向上につなげられるか―。3社連合の真価が問われる。

(取材・後藤信之)
日刊工業新聞2020年2月3日

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