5G時代で絶好の商機、電子部品メーカー「僕たちの技術を見てくれ!」

スマホ・基地局…活躍の場広がる

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村田製作所の樹脂多層基板「メトロサーク」。積層前のシートを折り曲げて折り鶴も作れる

高信頼性の部品を供給する日本の電子部品業界で第5世代通信(5G)に対する期待が高まっている。2020年から5G対応スマートフォンの販売が本格的に増加していく。5G基地局向けを含め、新型実装機、新材料、新技術などを各社が提案し、市場に続々と投入し始めている。

スマホの市場シェア上位の韓国・サムスン電子と中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は1月、グローバルにおける19年の5Gスマホの出荷台数を発表した。サムスンは670万台以上で、ファーウェイは690万台以上とした。ゴールドマン・サックス証券は世界市場における20年の5Gスマホ台数を控えめに見ても2億台を見込んでおり、ここ数年の業績のけん引役をどこに置くかを見極めている電子部品各社にとっては絶好の機会といえる。

現行に比べて高い周波数帯を使う5Gスマホには、現行の周波数帯に対応しながら、新しい周波数帯にも対応するアンテナや通信品質を高めるためのフィルターが必要になる。このため、おのずと部品の搭載点数は増える。

SAWフィルター、0.59秒で実装

TDKは5Gスマホの需要増を見越し、電子部品メーカー向けに表面弾性波(SAW)フィルター用のフリップチップ実装機「AFM―1520」を開発し、受注を始めた。実装速度は0・59秒と、0・6秒を切り、業界最速で基板に取り付ける。20年4月以降に順次納品する計画で、年間150―200台の販売を目指している。

SAWフィルターは必要な周波数の電波を受信し送信するために使われる。実装速度を引き上げるため、実装ヘッドの重量を従来機に比べ約20%削減。ソフトウエアのアップデートで同約10%速くした。実装精度は3シグマ当たりプラスマイナス7マイクロメートル(マイクロは100万分の1)。中国のローエンドスマホを中心にSAWフィルターの搭載数が増えるとされており、生産技術本部生産技術センターの河原幹之営業推進2課長は「実装機の速度を上げないと、(5Gスマホの)出荷台数目標に見合わなくなる」と指摘する。

石黒成直社長は「5Gを中心とする新たな情報通信技術(ICT)プラットフォームが間違いなく今年から始まる。チャンスや可能性は非常に大きい」と5G関連産業に期待を寄せる。

TDKのSAWフィルター用フリップチップ実装機

柔軟・折り曲げられる樹脂多層基板

5Gスマホ向けでは村田製作所の樹脂多層基板「メトロサーク」が、部品点数が大幅に増える5Gスマホの省スペース化に役立つとして注目される。柔軟に折り曲げられるため、ネットワーク技術開発部の早藤久夫部長は「アレイアンテナのモジュールを折り曲げることで、スマホ内部の2辺を一つのモジュールでカバーできる」としている。

また、5G基地局向けでは村田製作所が基地局での使用も想定した、FPGA(プログラミングできるLSI)などの中央演算処理装置(CPU)用の小型DC(直流)/DCコンバーター「モノブロック」を製品化している。

ポイント・オブ・ロード(POL)と呼ばれるモジュール部品で、CPUの駆動に必要な電圧を制御する。ミリ波帯向けで顧客に提案中だ。今春には従来品の3分の1の面積のPOLモノブロックを量産する予定で、既にサンプル提供を始めている。ローパワープロダクツ商品部商品技術課の嶋中康彦シニアプロダクツエンジニアは「5Gでアンテナの数が増えて電力量も増しているので顧客からの要求も増えている」としている。

「銅の2倍」熱逃がす複合材

ミリ波帯のモジュール構造で問題視され始めているのが放熱の問題だ。限られたスペースに従来よりも高電力量の部品を配置するため、より多くの熱を逃がす必要がある。紙管を製造する昭和丸筒(大阪府東大阪市)は、こうした課題の解消に取り組んでいる。厚み方向に銅の2倍相当の1メートルケルビン当たり800ワットの熱伝導率を持つ密着性の高い熱伝導複合材「Zebro(ジブロ)」を開発した。5G時代のデータセンターの半導体・通信機器向けなどの熱対策用途を想定し、市場調査と用途開拓を始めた。20年内の量産を目指している。

熱伝導材料に高グレードの黒鉛シートを使い、これを積層している。黒鉛シートは水平方向に放熱する特性があるため、ブロック化したものを垂直方向に切断加工し、90度寝かすことで厚み方向に熱を逃がすことに成功した。複合材はシートの場合、50ミリメートル角で厚さ0・5ミリ―1ミリメートル、立体の場合、100ミリメートル角で厚さは最大100ミリメートルまで対応できるという。耐熱温度は180度C。各種グレードを用意した。

各種グレードに対応する昭和丸筒の熱伝導複合材「ジブロ」

低損失材の加工精度磨く

その他にも各社で技術開発が進んでいる。プリント基板を設計・製造・実装・技術開発するキョウデンは、5G・低損失・放熱にテーマを絞り込んで新規事業の開発に取り組む。営業本部市場開発室の坂井博一室長は「高速通信・大容量の5G時代に求められるのは、低損失材の加工技術にある」とする。同社はこれまでの自社の加工技術の精度を見直し中だ。その一つの成果がローカル5Gで使うインフラ向けのミリ波レーダー用のアンテナ基板などの加工精度の向上だ。また、放熱対策にも力を入れる。高速・大容量で情報処理すると部品の発熱量が上がるため、高放熱基板の開発を進めている。これらで新たな市場を掘り起こす。

5G向けは試作・開発を手がける企業にも恩恵がある。東芝グループで半導体やモジュールなどの試作を行う東芝ビジネスエキスパート(横浜市港北区)では、「5G向けとみられる話で引き合いは増えている」(エンジニアリング部の荒川雅之チーフエンジニア)という。同社は抵抗の低い銅で基板に直接付ける「銅ボールバンプフリップチップ実装」などの提案をしている。

電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、5G市場の世界需要額は今後、年平均63・7%増で成長し、30年には168兆3000億円と、18年比約300倍に拡大する見通し。電子部品各社の取り組みはますます活発化しそうだ。

(取材=山谷逸平)

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