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フィンランドがエストニアに抜かれドイツは危機感、国際学習到達度で見えてきた地殻変動

経済協力開発機構(OECD)が3年に一度行う学習到達度調査(PISA)の2018年の結果が、19年12月初旬に公表された。これは義務教育終了段階の15歳児を対象に、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野で実施されたものだ。OECD加盟国(37カ国)と非加盟国、合わせて79カ国・地域が参加して行われた。結果は読解力、数学、科学とも北京・上海・江蘇・浙江(中国都市・省)が1位、シンガポール、マカオがそれぞれ3分野とも2位、3位を占めた。香港、台湾、韓国などのアジア諸国・地域もそれぞれの分野で上位を占めている。

日本からは国際的な規定に基づき抽出された183校、約6100人が参加し、読解力で15位、数学的リテラシーで6位、科学的リテラシーで5位という成績を収めた。問題として指摘されたのが読解力で、前回の8位から低下している。判断の根拠や理由を明確にし、自分の考えを述べることに課題があると指摘されている。また、調査の一環として実施された授業でのデジタル機器の活用状況については、OECD諸国の中でも低位であることが明らかになった。

欧州諸国の成績およびその評価はどうであろうか。成績でかつて常に上位を占めていたフィンランドがエストニアに抜かれたのが注目を浴びている。IT産業に力を入れているエストニアは、教育でもフィンランドをモデルにしているといわれていたが、地位が逆転してしまった。

フィンランドは読解力(7位)と科学(6位)で上位を占めているが、数学では16位となっている。3分野で平均して好成績を収めているのがポーランドであり、読解力、数学が10位、科学が11位である。

PISA調査は平均的な学力ばかりでなく、恵まれた層とそうでない層の生徒の学力差、男女差、参加した生徒の移民出身者比率なども調べ、さらに学校の学習環境、生徒の幸福感などについてもアンケートを実施している。

ドイツでは成績が低下傾向にあるため、マスコミでは“PISAショック”という言葉もみられ、経済界も危機感を表明している。この結果は国際競争力の低下と将来の福祉水準の低下をもたらしかねないという極端な意見もみられた。

一方で、移民の子弟の参加が増加していることが成績にも影響を与えているし、そもそも、国別でみる成績の差はわずかであるため、大騒ぎすべきではないという教育学者の意見も紹介されている。英国で特に問題視されたのは学力ではなく、生徒の生活への満足度で、学力調査参加国の中でも最低に近いレベルであった。

(文=新井俊三・国際貿易投資研究所客員研究員)
日刊工業新聞2020年1月30日

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