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「電子部品の王者」へ売上高2兆円よりも利益必達、村田会長の勝算

村田製作所会長兼社長・村田恒夫氏インタビュー
「電子部品の王者」へ売上高2兆円よりも利益必達、村田会長の勝算

村田会長

―2020年度の見通しは。
「積層セラミックコンデンサー(MLCC)の通信機器市場向けは、中国の第5世代通信(5G)対応の基地局とスマートフォンの立ち上がりが力強い。一方、自動車向けは直接顧客のティア1の在庫は適正化したものの、代理店の在庫調整は今春までずれ込む見通し。先進運転支援システム(ADAS)やハイブリッド車を含む電動化は長期トレンドで、使用部品点数は増える。底を打っており、年率5―10%の売上高成長を見込む」

―現在進めている3カ年の中期経営計画で21年度売上高2兆円(18年度比27%増)を掲げますが、最初の19年度は減収見通しです。
「無理に残り2年間で2兆円まで伸ばす考えはない。だが、営業利益率17%(18年度は16・9%)と税引き前ROIC(投下資本利益率)20%(同18・9%)の目標はしっかり達成したい。価格是正や不採算商品の生産終了などでプロダクトミックスは良化した。事業ポートフォリオ見直しと、スマートファクトリー化による利益率改善に注力する」

―容量が業界最高水準の全固体電池を20年度に量産します。電池事業の状況は。
「全固体電池は、まずは耳に装着するヒアラブル機器向け。適用対象を広げるため、エネルギー密度をさらに高める開発を推進中だ。リチウムイオン電池は19年度上期に生産設備で198億円の減損損失を計上した。ラミネート型はスマホ向けで競争力がなく、別の小型機器向けに注力する。円筒型は電動工具、コードレス掃除機向けを模索したが市場の伸びがない。データセンターのバックアップ電源、非常用電源、家庭用蓄電池に方向性を変える。減損で黒字化に1歩踏み出したが、2歩3歩と進まないと難しい」

―労働力不足や国連の持続可能な開発目標(SDGs)への対応はどうですか。
「ITやRPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)による効率化をグローバルに広げる。環境負荷物質の低減や、二酸化炭素排出量の削減にも力を入れる。顧客に一番に選んでもらえるグローバルナンバーワン部品メーカーを目指している」

【記者の目】 村田製作所は5G関連の技術や製品開発、生産整備を積極的に進めており、アドバンテージがある。2020年は5Gサービスの本格化などを背景に世界の電子部品需要が伸びる見通し。ここ3年で同社は毎年3000億円規模の「激しすぎる投資」(村田恒夫会長兼社長)を行っており、刈り取り期に入る。
(京都編集委員・松中康雄)

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日刊工業新聞2020年1月23日

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