半導体投資の回復が見えてきた!装置メーカーも新たな商機に臨戦態勢
日本半導体製造装置協会(SEAJ)は、2021年度までの日本製半導体・薄型パネル製造装置の需要予測をまとめた。このうち、半導体製造装置は記録用半導体メモリーの投資回復により20年度の販売額が前年度比8.0%増の2兆2311億円、21年度も同12.0%増加する見通しだ。米中貿易摩擦の影響などで落ち込んだ半導体業界に復調の兆しが見え始めた。
SEAJによると、19年度の半導体製造装置の販売額は貿易摩擦の影響で需要が低迷し、8.1%減を見込む。ただ、半導体需要は、第5世代通信(5G)の普及に加え、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)向けなど用途が拡大しており、今後の製造装置の需要を押し上げる。
微細化に挑む、5G・EV進展で
半導体製造装置業界で、第5世代通信(5G)や電気自動車(EV)向けに微細化された半導体を見据えた製品開発が活発になっている。キヤノンは2月、日立ハイテクノロジーズは2020年度中に新製品を発売する。パナソニックと東京エレクトロンは、19年に他社との協業体制を構築。20年以降にその成果が見えてくる。
キヤノンは、小型基板向け半導体露光装置「FPA―3030iWa」を2月下旬に発売する。直径200ミリメートルのウエハーサイズに対応しており、複数の元素を材料にする化合物半導体も加工の対象になる。直径200ミリメートルサイズの同クラスのi線露光装置は1995年に発売した装置以降、開発を止めていた。従来機種は販売を中止しており中古市場で買い求める企業があった。半導体の微細化が進む中で、直径200ミリメートルに対応した製品のニーズが高まってきたことが背景にある。
微細な半導体の加工時における、歩留まり向上に着目したのは日立ハイテクノロジーズ。5ナノメートル(ナノは10億分の1)世代という微細な半導体の量産に対応した計測装置「CG7300」を2020年度中に投入する。測長再現精度を同社従来機比20%向上した0・12ナノメートルを実現した。
極端紫外線(EUV)露光技術で微細な半導体を生産するメーカーの採用を見込む。EUV露光技術は7ナノおよび5ナノメートル世代の半導体デバイスの量産で活用されているが、「回路線幅のバラつきや揺らぎが発生するなどの課題がある」(堀田尚二ナノテクノロジーソリューション事業統括本部事業戦略一部長)と指摘。計測時間を短縮し精度を高めた同装置により、半導体の歩留まり改善につながることを訴求する。
東京エレクトロンは、米BRIDG(ブリッジ、フロリダ州)と半導体製造装置やプロセス技術の開発で19年7月に提携した。直径200ミリメートルウエハーに対応した半導体製造装置向けの開発インフラを持つブリッジの技術を東京エレクトロンが導入する。河合利樹社長は「IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)、自動車向けなどで200ミリメートルサイズの需要が急伸している」と話す。
これまで磨いてきた直径300ミリメートル対応技術を、直径200ミリメートル対応の製品に落とし込む必要があると判断。ブリッジの設備を使いながら新しい技術や装置を開発し、実証につなげていく。
パナソニックは半導体需要の今後の増加を見据え、自社の半導体製造装置を効率的に稼働する方法を模索する。19年10月、同分野で日本IBMとの協業を発表。半導体チップの切り出しや端子の洗浄といった生産の後工程で、パナソニックの装置技術とIBMのデータ分析技術を合わせる。21年3月までにデータ分析のアプリケーション(応用ソフト)を市場投入する考えだ。
パナソニックのプラズマ技術を使ったダイシング装置にアプリを活用することで、数百種類のパラメーターの組み合わせから瞬時に最適な組み合わせを割り出す。新製品の立ち上げに要する期間を、従来比約10分の1の3日程度に抑えられる。同システムを「日本発信で世界展開したい」(樋口泰行専務執行役員)と期待する。
半導体の微細化と複雑化の進行は今後も止まらない。世界の半導体製造装置のシェアが高い国内メーカーの腕の見せどころとなる。培ってきた技術に新たな知見を加え乗り切ろうとしている。
(取材=石宮由紀子、大阪・日下宗大)<関連記事>
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