ワインの世界にも「ジャケ買い」がある
ミレニアル世代は人とのつながりや家族との時間を大切にし、自宅での食事やお酒を楽しむことが多いと言われる。彼らの食卓で好まれるお酒の一つがワインだ。
ワインは世界で最も多くの地域で飲料されているお酒の一つで、その歴史は新石器時代に始まったと言われる。ブドウの果汁を発酵させたアルコールであるため、健康によいとされ、古来ヨーロッパでは薬のように用いられたそうだ。日本でもポリフェノールが健康によいと紹介され、赤ワインブームが起こった。
ワインのラベルをエチケットと呼ぶ。これにはワインに関する基本的な情報が明記されており、ワインを選ぶ手がかりとなる。ラベルは通常文字や絵を使ってデザインされ、ブランドを象徴する。CDのジャケ買いのように、ラベルのデザインでワインを選ぶ方もいるそうだ。ラベルのセンスは、ワインの味にも通じるはずだという考えが働くらしい。
フランスワインを代表するブランド「シャトー・ムートン・ロートシルト」のラベルは、価値あるアートラベルとしてファンが多い。高価なワインなので、何かの記念日に利用する方もいるだろう。1945年からはアートラベルが毎年変わり、ピカソやシャガールなど著名な芸術家が名を連ねる。2人の日本人画家もデザインをした。
近年、国産ワインがブームだ。日本の酒造会社が日本でのワイン造りに力を入れているニュースもよく耳にする。
個人のワイン醸造家も増えている。海外からも注目される女性醸造家、池野美映氏は、2007年から八ケ岳山麓の小高い丘陵地にワイン用ブドウの栽培を始め、全国にファンを持つドメーヌ ミエ・イケノを誕生させた。ワインのラベルに猫を描いたのは開墾前、初めてこの土地を訪れた時に、たくさんの猫の足跡があったことからブドウ畑に「猫の足跡畑」と名付け、それをモチーフにしたからだ。八ケ岳の麓で不安と希望を同時に抱えながらワイナリーを開いた自身と猫を重ねて表現したと池野氏は言う。ワインのエチケットには基本情報とともに、作り手の思想や情熱も表現されている。ワインのラベルのデザインに込められた思いも感じてほしい。(西谷直子・三井デザインテック・コミュニケーション・エディター)