昭和電工が日立化成買収へ、なぜ「GAFA」に危機感?
昭和電工は18日、日立化成の全株式取得に向けて1兆円に迫る巨額買収に踏み切ると発表した。第5世代通信(5G)普及やデジタル化による産業変革に向けてポートフォリオを再構築する。素材に加え、日立化成から部品やサービスの知見を補完し、競争力を高める。合計売上高は1兆7000億円弱となり、国内4位、世界での存在感も高まる。
森川宏平社長が統合の背景と語ったのは、意外にも米グーグルなどのテクノロジー企業群“GAFA”の存在だった。バリューチェーンが変わり、巨大テクノロジー企業が直接素材産業に関わる例もある。情報通信産業に強く、サプライチェーンの川下にある日立化成と一体化し、情報電子や自動車向け素材で「グローバルトップの機能性化学メーカーとして勝ち残る」(森川社長)ことを目指す。
2020年2月頃をめどに1株4630円で株式公開買い付け(TOB)を実施する。買い付け代金は約9640億円。全株取得は同5月を見込む。21年5月に実質的な事業統合、吸収合併は早くて23年末となる見通し。
買収にあたり、財務の健全性維持を考慮したスキームを選択した。買収主体となる特別目的会社が、A種優先株発行によって2750億円、日立化成の安定収益を前提としたノンリコースローンで4000億円を調達する。昭和電工から同子会社への出資は、銀行からの融資をもとにした2950億円とする。
多岐にわたる事業群は顧客への提案力で強みになる一方、リソースが分散するリスクもある。目標である「世界有数のソリューション提供カンパニー」(同)を実現するには、統合作業がカギを握る。共同購買や拠点統廃合などを実施し、コスト面で年200億円以上のシナジーを創出。事業ポートフォリオの再編は「聖域を設けず(事業売却などを)行う。両社合計で1000億円規模も辞さない」(同)と語る。業績などの中期目標は、20年末頃の公表を予定する。
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