売却報道の日立化成社長「自分の足で立てることを目指してきた」

日立の事業再編、次の候補は?

 日立製作所が主要子会社の一つである日立化成の売却を検討していることが25日、分かった。IoT(モノのインターネット)関連事業に注力する中、半導体材料などを手がける日立化成の事業は相乗効果が見込みにくいと判断した。複数の事業会社や投資ファンドと交渉していると見られ、早ければ2020年3月期中に売却に踏み切る見通しだ。

 日立は日立化成株の51%を保有している。日立化成は半導体材料などで高いシェアを持つ。ただ長年にわたり、検査データ改ざんなどの不正をしていたことが18年に発覚。信頼回復が課題となっている。

 日立化成の丸山寿社長は25日の会見で「決定した事実はない」とした上で、「スピンオフ(分離)されても、自分の足で立てる事業基盤を目指してきた」と説明した。「株を所有している会社が決めることだが、もしそういう情報をいただければ『私たちはこういうシナリオで、グローバル(市場)で大きくなりたい』と情報交換する機会を持つことになるだろう」と話した。

 日立はこれまで、中核であるIoTとシナジーの薄い事業や営業利益率の低い事業の切り離しを進めてきた。日立化成の売却となれば、「御三家」も例外にあらずという市場に対する強烈なメッセージになる。

 日立化成は日立金属と、13年に日立金属と合併した日立電線とともに「御三家」と呼ばれてきた。多くの日立子会社の中でも独立心旺盛な上場子会社で、長らく「治外法権に近い状態」(金融関係者)だった。日立は08年のリーマン・ショックで巨額赤字を計上し、構造改革に着手。御三家の幹部を日立本体の役員に迎えるなど、歴代の日立の経営者は掌握に腐心してきた。それだけに今回の売却は日立の「本気度」がうかがえる。

 日立は900社あるグループ会社を数年で500社程度まで集約する方針を打ち出している。17年に日立国際電気、18年にクラリオンなど子会社の中で知名度が高い企業も相次いで売却している。

 日立は営業利益率10%を目標に掲げている。利益率が絞り込みの一つの指標だが、日立化成の19年3月期の調整後営業利益率は7・1%にとどまっている。

 数字のみでの判断は難しいが、日立が中核に据えるIoTと日立化成の電池材料などのシナジーは決して高くない。18年に品質不正が発覚したこともあり、売却に一気にかじを切った可能性が高い。

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前3月期、営業益21%減


 日立化成が25日発表した2019年3月期連結決算(国際会計基準)は、営業利益が前期比21・3%減の363億円だった。18年に発覚した検査不正の関連費用がかさんだ。スマートフォン向け製品の業績不振も響いた。

 同日発表した22年3月期までの中期経営計画はガバナンス強化と高収益基盤の確立を掲げた。不正の再発防止に向け、検査システム自動化に120億―150億円を投資する。

 調整後営業利益率10%以上を目指す。19年3月期は7・1%と低迷した点について、会見した丸山寿社長は「深刻に捉えている」と話し、利益率が高い情報通信分野に重点的に投資する考えを示した。
                 

日刊工業新聞2019年4月26

明 豊

明 豊
04月26日
この記事のファシリテーター

日立の再編はまだ終わらないだろう。焦点の一つは自動車機器事業。もちろん成長の可能性はあるがクラリオンは売却、100%子会社の日立オートモティブシステムズについても、売上高は1兆円超はあるものの、「CASE」時代にグループ内にいた方がいいのか、外に出た方が価値を高められるのか、社内や投資家などからも議論のあるところだ。

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