ニュースイッチ

野村総研、シリコンバレーに拠点の狙い

若手海外研修で顧客と共創活動

野村総合研究所(NRI)は新規事業立ち上げを目指す企業との共創活動として、米シリコンバレーでの「PoC(概念実証)実験場」を始動する。NRIの若手システム技術者(SE)を海外研修の枠組みで最大3カ月派遣。客先の駐在員や現地のITベンダーらを交えて、試行開発などのイノベーション活動を通常の半分以下の費用で実践する。若手の研修機会を広げるとともに、NRIの価値を体感してもらうなど、一石二鳥の効果を目指す。

客先との共創によるイノベーション活動をNRIの海外研修と一体で行うことで、客先からみると、内製化と変わらないクローズドな形で、本場シリコンバレーでのPoCを経験できる。

個々のPoCのみのために現地にSEを派遣して長期駐在させると、コスト高となり採算が合わない。今回のスキームでは全体を“研修仕立て”とし、客先も含めてメンバー各社はそれぞれ参加者分の実費を研修料として毎月支払う。日本から送り出すSEの滞在コストを研修費用で賄えるため、通常の受託開発などでSEを海外に常駐させるのに対して、総コストを半分以下もしくは3分の1程度に抑えられるという。

こうした試みは業界初。スキーム確立に向けた先駆例では、大手生命保険会社の現地拠点を客先として、ベンダー側はNRI、保険加入のプラットフォーム(基盤)を持つ米スタートアップ企業の計3社で実施した。さらにNRIのSE関連パートナー4社にも参加を呼び掛け、うち1社が先駆けて参加した。

研修仕立てのPoC実験場は定期的に年4回程度行う予定。NRIの若手SEの海外研修は中国で行っているが、世界的なIT先進地であるシリコンバレーならば、さらにモチベーション向上につながるという。

金融機関などの大手企業は既存のITパートナーとの結びつきが深く、新規案件の獲得は難しい。だが、今回のように海外で完結する割安のスキームならば敷居が低く、NRIにとっては新規顧客獲得の足がかりとなる。今後は生保以外に他の金融機関や対象業種に拡大する考えだ。

日刊工業新聞2019年12月3日

編集部のおすすめ