NEC、SDGsは高精度生体認証で実現する
NECは社会価値創造に向けて「I:Delight(アイディライト)」と呼ぶ新しいコンセプトを打ち出した。7日に都内で開幕した同社最大の自社イベント「iエキスポ2019」で新野隆社長が新コンセプトと、国連の持続可能な開発目標(SDGs)との関連性や、デジタル変革(DX)による価値創造について語った。
新コンセプトに基づくメッセージとして「信頼が生み出す自分だけの冒険」を提唱した。「自分だけの冒険」とは、一人ひとりが日々の生活で遭遇する体験を指す。これを踏まえ、新野社長は「高精度な生体認証やセキュリティーを担保することで、新しい顧客体験などで価値を創造する」と強調。デジタル技術が生活の隅々まで広がり、充実感や活力を実感できる安心・安全な社会への貢献を公約した。
SDGsに関連して掲げる目標として「2030年までに全ての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する」ことを掲げた。現在、世界人口の14%に当たる約11億人は出生登録に基づく法的な人格を持っていない。実現に向けて、NECは「生後2時間を含む生後24時間以内の新生児の指紋の撮像と照合に世界で初めて成功した」と説明。実用化への意欲を示した。
日刊工業新聞2019年11月8日
ケニアで新生児の指紋認証に成功
日刊工業新聞2019年6月25日
NECはケニア共和国で生後1年未満の新生児・乳児に対し、指紋撮像・認証技術の実証実験を実施し、生後2時間を含む出生当日の新生児を対象にエラー率0・3%での指紋認証に成功した。出生後、早期に生体情報の採取と認証を行うことで、出生証明・登録や退院時の本人確認、ワクチン接種記録などが可能になる。法的身分証明の提供を基に、新生児の健康や安全の大幅な改善が期待できる。
実証実験は長崎大学熱帯医学研究所との共同研究として、現地の長崎大ケニア拠点とともに実施した。
法的な身分証明を持たない人々の数は、世界で11億人に上る。さらに、1年間に新生児260万人を含む5歳以下の子ども560万人が命を落としており、その大半の死因は、予防や治療で回避できる病気とされている。
このような問題を解決するには、新生児期の出生証明・登録による本人の同定手段が必要。生後6時間未満の新生児の生体情報の確実な採取法と照合法の確立が求められている。
実証実験では、新生児用の指紋撮像技術など、出生後数時間の新生児にも負担の少ない方法を採用。高分解能を持つ10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の撮像素子を搭載した高解像度イメージセンサーを採用するとともに、模様を強調する特殊ガラスを組み合わせることで、出生直後の新生児の指紋を採取するために必要な20マイクロメートル程度の谷線部模様に対し、高精細な撮像を可能にした。