シャープが「AIoT」で狙う勝ち筋

AIoTクラウド・白石奈緒樹副社長インタビュー

 シャープが人工知能(AI)とIoT(モノのインターネット)を組み合わせた「AIoT」によるプラットフォーム(基盤)事業に注力している。中国や欧州向けの液晶テレビ販売が落ち込むなど、ハードウエアを中心とした従来型の事業に陰りが見える中、データで稼ぐビジネスモデルをどう描くか。10月に分社化したAIoTクラウド(東京都江東区)の白石奈緒樹副社長に聞いた。

 ―事業内容を教えて下さい。
 「シャープの製品やサービスをAIoT化する組織そのものを分社化した。通常のIoT化では提供する価値に対してコストがかかりすぎるので利益が取れない。打破するためAIを活用し、機能や性能を高めた基盤を提供する。レシピをダウンロードできる自動調理鍋『ヘルシオホットクック』など、対応機種を拡大中だ。関連のサポートサービスは、同じく分社化したシャープココロライフ(大阪府八尾市)が担う」

 ―競合他社との差別化をどう進めますか。
 「見守りや宅配など、さまざまなサービス事業者とデータ連携しやすくするため、各社の基盤と横連携する仕組みを構築する。ある顧客が複数の基盤を利用しているなら、IDを突き合わせればデータは連携できる。クラウドにどうつなぐかよりも、その先のサービス事業者にどうつなぐかの方が重要だ」

 ―こうした仕組みは一般的ではないということですか。
 「現在、巨大基盤を構築し、そこに各事業者をつながせる垂直統合の考え方が中心だ。だがこれだとそれぞれの機器やサービスの違いを吸収できず、連携を広げられない。現在の方法でうまくいかないことは、米グーグルや米アマゾン・ドット・コム自身がよく分かっているはずだ」

 ―必要な投資は。
 「IDを突き合わせて個人情報を保護しながらデータ連携する仕組みや、データの正規化などにより情報の質を高める仕組みを構築する。だからこそ、データサイエンティストやAIを活用するエンジニアの増員は不可欠だ。それに伴いデータ処理量も増大し続けるため、現在1拠点のデータセンターを2020年度中にも2―3拠点に拡大し対応する。家庭から適切に取り出した情報をサービス事業者や行政が適切に扱う仕組みが必要だ。シャープ製品のシェア向上だけでは実現できない。まずは20年度までに他社連携を約50社にし裾野を広げたい」

【記者の目/“稼げる事業”育成なるか】
米巨大IT4社「GAFA」の基盤では社会課題を解決できないのではないか―。白石副社長の説明は、現場でのシビアな調整を踏まえたもので、説得力がある。ただ当面は収益化が見込めない事業なのも事実。8Kや5G(第5世代通信)関連製品で業績回復を進めながら、いかに早く“稼げる事業”へ育てられるかが試される。
(取材=大阪・園尾雅之)
                    

日刊工業新聞2019年11月6日

  

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