トヨタが引き金、再編に飲み込まれる自動車部品メーカー
日立とホンダが統合、勝ち筋は見えたか?
自動車産業の変革は部品メーカーの再編を促している。日立製作所とホンダが、傘下の自動車部品メーカーの合併を決めた。従来技術の底上げ、ソフトウエアを組み込んだシステム部品の展開、事業規模拡大による効率化などが狙いだ。背景には電動化や自動運転技術が巻き起こす自動車産業の大変革がある。トヨタ自動車がグループ再編を進めるほか、海外のメガサプライヤーはM&A(合併・買収)を積極化する。業界の再編の動きから目が離せない状況が続きそうだ。
独ボッシュや同ZFなど海外メガサプライヤーは巨大資本を武器にM&AでCASE関連の分野に必要な技術を取り込む。クラリオンも仏フォルシアの傘下に入ったほか、旧カルソニックカンセイと欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の自動車部品部門は経営統合し、マレリが誕生した。
国内ではトヨタ自動車が一足早くグループ内再編に着手。14年にブレーキ事業のアドヴィックスへの集約や、豊田自動織機へのディーゼルエンジン開発・生産の移管を決定。15年にはトヨタ向けシート骨格機構部品の開発・生産をトヨタ紡織に集約した。18年に主要電子部品事業のデンソーへの移管のほか、19年にはデンソーが愛三工業を、ジェイテクトが豊精密工業を子会社化することで合意した。
完成車メーカーが競争力を高めるにはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応が不可欠で、ホンダも例外ではない。ITなど異業種の知見が必要になるCASE関連の開発は手間もコストも膨大。並行して従来型の自動車開発も継続しなければならず負担は増す。
部品メーカーもCASE対応が欠かせない。日立とホンダの新統合会社が注力する主な分野は電動化や先進的なシャシー、自動運転・先進運転支援システムといった分野だ。電動車向けパワーコントロールユニット(PCU)といった燃料や電力の制御系部品を得意とするケーヒン、ショックアブソーバー(緩衝器)など足回り部品のショーワ、ブレーキ部品の日信工業とそれぞれの強みを生かした事業を想定する。
「本当の意味でのグローバルメガサプライヤーになれる」。新統合会社の日立オートモティブシステムズ(仮称)でもトップを務める予定の日立オートモティブシステムズ(AMS)のブリス・コッホプレジデント&最高経営責任者(CEO)は意気込む。特に「電動化はナンバーワンになれる」(コッホCEO)と挙げ、日立AMSとケーヒンの電動化技術での相乗効果を狙う。先進シャシーでもショーワや日信工業とブレーキやサスペンション、ステアリングなどでトップクラスを目指す。
一方、ホンダ系3社と日立AMSはPCUや緩衝器などで重なる事業領域があるが、コッホCEOは「別の事業に集中するなど事業の効率を上げられる」と説明。規模の拡大による研究開発での人材活用や顧客へのリーチ拡大といったメリット面を強調した。
ホンダ系3社も次世代技術開発などの対応を強化してきた。ケーヒンはPCUの小型化などで性能を高め、国内工場で生産能力を増強した。ショーワは自動運転など向けにハンドル操作の力を電気信号でタイヤに伝えるシステム「ステア・バイ・ワイヤシステム(SBWS)」の開発に取り組む。日信工業も自動運転時代を見据えた電動キャリパーやドラム式電動パーキングブレーキ(EPB)を開発中だ。
サプライヤーに期待する役割は高まる。複数の個別部品を統合しソフトも組み込んだシステム部品を求めるようになった。また自動車の「走る・曲がる・止まる」の基本領域は、今まで以上に多くの仕事を部品メーカーに任せる動きが広がる。
ケーヒン、ショーワ、日信工業はそれぞれ高い技術を持つが、売上高は3社合計で8000億円強と見劣りした。それが日立AMSと合併すれば、国内3位に食い込む規模で事業効率化や開発力向上が期待できる。
まずは「走る・曲がる・止まる」を安心して任せられ、さらにシステム部品でも競争力のあるケイレツを誕生させることがホンダの大きな狙い。貝原常務執行役員は4社の合併で「まずは車両1台の統合制御に対応できるようにする。その先、CASEまで可能性が広がる」とし、ケイレツ再編を「ソフト統合などに広げる可能性はある」と指摘した。
変革の先を見据え、国やケイレツ、業種といった枠組みを超えた合従連衡が活発化する。
独ボッシュや同ZFなど海外メガサプライヤーは巨大資本を武器にM&AでCASE関連の分野に必要な技術を取り込む。クラリオンも仏フォルシアの傘下に入ったほか、旧カルソニックカンセイと欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の自動車部品部門は経営統合し、マレリが誕生した。
国内ではトヨタ自動車が一足早くグループ内再編に着手。14年にブレーキ事業のアドヴィックスへの集約や、豊田自動織機へのディーゼルエンジン開発・生産の移管を決定。15年にはトヨタ向けシート骨格機構部品の開発・生産をトヨタ紡織に集約した。18年に主要電子部品事業のデンソーへの移管のほか、19年にはデンソーが愛三工業を、ジェイテクトが豊精密工業を子会社化することで合意した。
完成車メーカーが競争力を高めるにはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応が不可欠で、ホンダも例外ではない。ITなど異業種の知見が必要になるCASE関連の開発は手間もコストも膨大。並行して従来型の自動車開発も継続しなければならず負担は増す。
部品メーカーもCASE対応が欠かせない。日立とホンダの新統合会社が注力する主な分野は電動化や先進的なシャシー、自動運転・先進運転支援システムといった分野だ。電動車向けパワーコントロールユニット(PCU)といった燃料や電力の制御系部品を得意とするケーヒン、ショックアブソーバー(緩衝器)など足回り部品のショーワ、ブレーキ部品の日信工業とそれぞれの強みを生かした事業を想定する。
「本当の意味でのグローバルメガサプライヤーになれる」。新統合会社の日立オートモティブシステムズ(仮称)でもトップを務める予定の日立オートモティブシステムズ(AMS)のブリス・コッホプレジデント&最高経営責任者(CEO)は意気込む。特に「電動化はナンバーワンになれる」(コッホCEO)と挙げ、日立AMSとケーヒンの電動化技術での相乗効果を狙う。先進シャシーでもショーワや日信工業とブレーキやサスペンション、ステアリングなどでトップクラスを目指す。
一方、ホンダ系3社と日立AMSはPCUや緩衝器などで重なる事業領域があるが、コッホCEOは「別の事業に集中するなど事業の効率を上げられる」と説明。規模の拡大による研究開発での人材活用や顧客へのリーチ拡大といったメリット面を強調した。
ホンダ系3社も次世代技術開発などの対応を強化してきた。ケーヒンはPCUの小型化などで性能を高め、国内工場で生産能力を増強した。ショーワは自動運転など向けにハンドル操作の力を電気信号でタイヤに伝えるシステム「ステア・バイ・ワイヤシステム(SBWS)」の開発に取り組む。日信工業も自動運転時代を見据えた電動キャリパーやドラム式電動パーキングブレーキ(EPB)を開発中だ。
サプライヤーに期待する役割は高まる。複数の個別部品を統合しソフトも組み込んだシステム部品を求めるようになった。また自動車の「走る・曲がる・止まる」の基本領域は、今まで以上に多くの仕事を部品メーカーに任せる動きが広がる。
ケーヒン、ショーワ、日信工業はそれぞれ高い技術を持つが、売上高は3社合計で8000億円強と見劣りした。それが日立AMSと合併すれば、国内3位に食い込む規模で事業効率化や開発力向上が期待できる。
まずは「走る・曲がる・止まる」を安心して任せられ、さらにシステム部品でも競争力のあるケイレツを誕生させることがホンダの大きな狙い。貝原常務執行役員は4社の合併で「まずは車両1台の統合制御に対応できるようにする。その先、CASEまで可能性が広がる」とし、ケイレツ再編を「ソフト統合などに広げる可能性はある」と指摘した。
変革の先を見据え、国やケイレツ、業種といった枠組みを超えた合従連衡が活発化する。
日刊工業新聞2019年10月31日の記事から抜粋