SDGs推進へ…「曼荼羅」がカギを握る

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環境省総合環境政策統括官・中井徳太郎氏
 地域資源を活用して環境・経済・社会の課題を同時解決する「地域循環共生圏」の概念図は、「曼荼羅(まんだら)」と呼ばれている。びっしりと並ぶ文字が森、里、川、海を埋め尽くす構図が、多数の仏を描いた密教の曼荼羅と似ているからだ。概念図には先端技術やビジネスによって成立する未来像が描かれており、地域循環共生圏の創造に企業が不可欠となっている。

地域とつなぐ基盤事業始動


 概念図には細かい文字で再生可能エネルギー、資源循環ビジネスなど地域循環共生圏の要素が書かれている。よく見ると「災害に強いまち」「人に優しく魅力ある交通・移動」「健康ビジネス」など環境以外の要素もある。環境対策が経済と社会の向上にもつながる地域循環共生圏の“世界観”を表現した。

 環境省は各地域に対し、地元の資源を生かした“地域版曼荼羅”の作成を呼びかけており、技術を持つ企業の協力が欠かせなくなっている。同省環境計画課企画調整室の岡野隆宏室長は「自動運転は地方で暮らす高齢者の移動手段となる。都市の企業が持つ最先端技術には、地方の課題解決につながるものが多い」と見込む。

 そこで同省は、地域と企業を結びつけるプラットフォーム事業を始めた。地域側が課題を明確にし、企業が自社の技術で解決できる課題を発見する場だ。「どんな形なら参加しやすいのか、企業の要望を聞きながら進めている」(岡野室長)という。企業は課題解決力を発揮し、持続可能な開発目標(SDGs)を実践できる。

インタビュー/環境省総合環境政策統括官・中井徳太郎氏 柔軟発想でテーマ抽出/地域の“熱意”可視化


 地域循環共生圏を提唱する環境省の中井徳太郎総合環境政策統括官に、曼荼羅に込めた狙いなどを聞いた。(編集委員・松木喬)

 ―地域循環共生圏とは。
 「環境問題だけを解決しても、飢餓や貧困が放置されたままだと経済・社会は成り立たない。SDGsの17ゴールが調和した形が地域循環共生圏だ」

 ―曼荼羅の活用は。
 「一つの課題だけを考える従来型から転換し、あらゆるテーマをつなげた発想が求められる。エネルギーは移動、食、観光、防災にも関連する。エネルギー問題と移動手段を一緒に考えるような柔軟な発想が湧くテーマ出しに曼荼羅を使う」

 ―従来の地域支援との違いは。
 「地域側の“熱意”を可視化し、企業は何ができるかをつかむので、単なる地域と企業とのマッチングイベントではない。課題解決がテーマであり、継続的に物事が動く仕組みにする。地方は潜在能力を引き出し、足りないモノは都市部から補う相互連携もある」

 ―参加企業のメリットを教えてください。
 「企業は従業員やステークホルダーの幸せが目標だ。自社も、社会も良くなる地域循環共生圏は目指す方向としてわかりやすく、取り組むことによって企業価値が向上する」

 ―地域の中小企業が参加するには。
 「連携だろう。1社ですべてをやるのではなく、不足する部分は補完する。まずは地域で議論して未来の絵を描く。みんなの合意があれば地域全体が同じ方向に向くので連携が生まれやすい」

日刊工業新聞2019年10月25日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

モーターショーで小泉環境大臣に「地域循環共生圏について・・・」とメディアから質問が飛んでいました。環境省ワード(省内でしか通用しない意味)と言っていた小泉大臣も、質問されてうれしそうでした。少しずつ、認知され始めたのかもしれません。「曼荼羅」のほかに「でんでん太鼓」も地域循環共生圏を語る上で欠かせないツールです。30日、環境ジャーナリストの会の講座でも紹介します(30日19時~、渋谷区神宮前の地球環境パートナーシッププラザで)

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