地域資源を賢く利用してビジネスを興す"共生圏”が広がり始めた

環境・経済・社会の課題解決

SDGsリーダー研修には企業、自治体、NGO職員26人が参加した(いすみ市)
環境省が提唱する「地域循環共生圏」が認知され始めた。地域資源を賢く利用するビジネスを興し、環境・経済・社会の課題を同時解決する概念であり、「環境・経済・社会の調和」を掲げる持続可能な開発目標(SDGs)と一致する。地域課題解決をSDGs活動として位置付ける企業も多い。地域循環共生圏が日本におけるSDGs実践の場となるのか。

現場は地域にあり 環境省、リーダー育成


 環境省は4―6日、千葉県いすみ市で地域課題解決の担い手を育成する「SDGsリーダー」研修を開いた。国内大手や外資系企業の社員、北海道や長崎県内の自治体職員など26人が、2泊3日の研修にのぞんだ。

 参加者の中にダイキン工業サービス本部の橘健太郎さんの姿があった。空調メーカーと地域との関係が意外に思えるが、「地域の施工業者の協力がなければ空調の取り付けができず、当社と地域は共存関係にある」という。地域課題解決に貢献してダイキン工業への評価が高まり、地元業者から発注が来る好循環にしようとSDGsに取り組む。

 研修では市内の活性化の現場も視察した。いすみ市は地元の食材を活用したレシピづくりで“美食観光都市”を目指す。移住も促進し、「住みたい田舎」調査で上位に選ばれている。また、京葉銀行とNTT東日本がファンドを組成し、地域資源を生かした経済活性策を検討している。

 濃厚な合宿研修では地域循環共生圏の講義もあった。最終日には参加者が地域循環共生圏の創造に向けたアイデアを発表した。

自治体・企業、地域資源を活用


 地域循環共生圏は、2018年4月に閣議決定された「第5次環境基本計画」に登場した。「地域資源を活用し、環境・経済・社会活動を向上させる」考え方として紹介されることが多く、“地域版SDGs”と呼ばれる。

 わかりやすい地域資源が再生可能エネルギーだ。鳥取県米子市は企業と共同でエネルギー会社を設立し、地域で作った電気を市内で使う事業を始めた。二酸化炭素(CO2)の排出が減る環境対策にとどまらず、エネルギー会社や発電所に収益や雇用を生むので地域の経済・社会にも貢献する。鳥取県内の家庭や企業などの年間の電力料金1000億円は、地域外の電力会社に支払われている。再生エネの地産地消によって地域外への資金流出が抑えられ、地元に還元される。

 再生エネを売って地域外から“外貨”も獲得できる。青森県横浜町は、横浜市内へ再生エネ電気の供給を始めた。CO2の排出が少ない電気を求める横浜市内の企業や学校など6者と、再生エネ資源が豊富な横浜町とのニーズが合致した。都市部の企業も再生エネ電気の購入で横浜町の地域循環共生圏の形成に貢献できる。

 環境省は全省をあげて地域循環共生圏を推進する。構築支援のモデルとなる35団体を選定した。また、CO2排出ゼロを目指す脱炭素ビジネスを核とした66事業も支援する。企業にも参画機会があり、SDGsを実践できる。

           

2019年10月22日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

日刊工業新聞18日付「SDGs面」から。SDGsの勉強会・セミナーを聴講する機会が多いですが、合宿だと迫力も熱気も違います。各地から企業人、自治体職員がやって来ていて本気度が違います。次回のSDGs面では地域循環共生圏の「曼荼羅」に迫ります。30日19:00~環境ジャーナリストの会の講座でも紹介します(30日19時~、渋谷区神宮前の地球環境パートナーシッププラザで)

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