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「環境大臣・小泉進次郎」が埋めたい世界とのギャップ

“環境先進国”と胸を張れる国に
 小泉進次郎氏が環境相に就任した。就任直後から「石炭火力は減らす方向だ」と歯切れ良く語り、「私への期待を環境省への評価に変えたい」と聞き手を引きつける。環境先進国からの脱落を危惧する企業の声に応え実行力を発揮してほしい。

 経団連の二宮雅也企業行動・SDGS委員長(損保ジャパン日本興亜会長)は「環境問題は地球規模の課題であり、力を発揮できるチャンスと思う」と新大臣にエールを送った。小泉環境相も重要性を認識しており「日本で気候変動の問題の扱いが小さい。世界の首脳の共通言語は気候変動だ。私はこのギャップを埋めたい」と語る。

 産業界からは発信力を期待する声が多い。自身も「こんなにも露骨に売り込むのかというほど、日本の良いところを海外に知ってもらう」とし、日本の環境問題への取り組みを世界に発信したいと意気込む。

 それには説得力が必要だ。日本の温室効果ガス排出量は1990年よりも増加した。優れた省エネルギー技術があると宣伝しても、自国の温暖化対策が遅れていてはPR力に欠ける。

 また、国は“リサイクル優等生”を標榜(ひょうぼう)するが、廃プラスチックが製品材料に再利用されるのは2割台。5割は焼却して熱や発電に利用される。埋めるより環境への影響は小さいと説明するが、燃やすと二酸化炭素(CO2)を排出する。再生利用や代替素材の開発を進めるべきだろう。

 再生可能エネルギーの普及の遅れも指摘される。米国のグーグルやアップルは、事業で使用する電気を100%再生エネで賄っている。数%しか使えていない日本企業は見劣りする。

 環境先進国からの脱落に危機感を持った一部の企業は、CO2排出量に応じて費用を負担するカーボンプライシングの導入、レジ袋の有料化、再生エネの導入目標の引き上げを政府に訴えているが、経済界の中でも意見は割れている。

 小泉環境相には調整力を期待したい。そして胸を張って環境先進国と言える国にしてほしい。

新閣僚に聞く/環境相・小泉進次郎氏


 ―就任会見で「石炭火力発電は減らす」と発言しました。
 「(増設計画がある日本は)世界からも厳しい目で見られている。脱石炭(石炭全廃)に取り組む国々もある。日本のエネルギー事情を見て考えていかないといけないが、石炭火力を減らす方向性で取り組む」

 ―環境省の印象は。
 「環境省は環境のことばかりと思っていたが、違った。SDGs(持続可能な開発目標)担当省、そして社会変革担当省だ。世界の首脳同士の共通言語はSDGsや気候変動だが、日本で扱いは小さすぎる。私はこのギャップを埋めたい。23日からの国連総会・気候行動サミットで日本の取り組みを発信したい」

 ―気候変動対策について企業から厳しい政策を求める声があります。
 「ESG(環境・社会・企業統治)投資に注目している。これは国や政府を越えた動きだ。日本企業が莫大(ばくだい)な資金を引き込むには、おのずとESGに取り組まないといけない。企業は、市場の反応には敏感であり、環境省はESGを後押しする」

 ―温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の達成は。
 「イノベーションがなければ達成できない。一人ひとりのライフスタイル変革や技術開発を進め、再生可能エネルギーをさらに普及させる。できることはすべてやる。(環境省が提唱する地域版SDGs)『地域循環共生圏』をもっと社会に落とし込み、“環境省=社会変革担当省”を明確にする」

 ―二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする「脱炭素」への取り組みが、日本は遅れているという指摘があります。
 「遅れていると見られている部分、進んでいるのにPRできていない部分がある。天災は“常にやってくる”。地球環境が変化したからだ。それなのに気候変動が国の重要課題だという認識がない。そこを私は変えたい」(文=編集委員・松木喬)
日刊工業新聞2019年9月18、19日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
新大臣登場後、環境省の記者会見に参加する記者も増えました。 千葉の台風被害を気候変動の脅威として語り、危機感を強めていました。23日から外交デビューです。よい刺激を受けてきてほしいです。

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