オリンパスが「小型・軽量」ミラーレスを極める
マイクロフォーサーズ規格の新商品発売へ、最上位機並みAF性能
オリンパスは、マイクロフォーサーズ規格のミラーレス一眼カメラ「OLYMPUS OM―D E―M5 Mark Ⅲ=写真」を11月下旬に発売する。最上位機種に並ぶオートフォーカス(AF)性能でハイアマチュア層の需要を取り込む。本体の重さは同社従来機種比55グラム減の414グラム。本体の想定価格は15万円前後(消費税抜き)。販売目標は非公表。
最上位機種「同E―M1 Mark Ⅱ」と同じ121点オールクロス像面位相差AFを採用。従来品よりピントの精度や速度を上げた。アルゴリズムも改良。遠近の被写体が混在するシーンでも、狙った方にきちんとピントを合わせられる。
新開発の5軸手ブレ補正ユニットを搭載。最上位機種のユニットを最適化した。小型・軽量化と最大約5・5段分の手ぶれ補正効果を両立した。「5軸シンクロ手ぶれ補正」対応の交換レンズを使用すると、最大約6・5段分の補正効果を得られる。
従来機種の発売は約4年前。プロ向け製品の技術を効率化できるようになり、性能を向上できた。同社によると連写速度は最上位機種の方が優れており、撮影目的で購入動機が分かれるとしている。
オリンパスはマイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラを展開してきた。注目を集めるフルサイズミラーレスに対してどのように強みを発揮するのか、杉本繁実執行役員映像事業長に聞いた。(聞き手・国広伽奈子)
―2018年度に生産体制を再構築しました。
「中国の深圳に交換レンズの主力工場を置いていたが、ベトナムや日本に生産移管した。18年は構造改革に集中するために商品発表が思うようにできなかったが、ようやく新製品を出せる体制になった」
―19年度の目標は。
「新しいボディーやレンズを複数発表していきたい。レンズは19年度から毎年継続して複数本を発表する方針だ。工場では生産効率を高めて原価の低減に取り組む」
―ボディー開発の方針を教えてください。
「製品ラインアップのバランスはいい。エントリーモデルとハイモデル、その中間の3領域で引き続き製品を出していく。マイクロフォーサーズの強みを生かして、今以上に小型化・軽量化したシステムも検討している」
―小型化・軽量化に力を注ぐ理由は。
「小さくて軽いシステムは超望遠との相性がいい。特に交換レンズは焦点距離が伸びるほど大きく、重くなりやすい。望遠領域での製品の小型・軽量化は(フルサイズなど)他社との差が際立つ」
―35ミリメートル判換算で焦点距離1000ミリメートル相当という超望遠レンズを開発中です。
「フルサイズのシステムで作ると相当大きなレンズになってしまうだろう。テレコンバーターを使えば最大2000ミリメートル相当まで伸びる点も踏まえると、かなり大きな強みを持つ製品になる」
―手持ち撮影にこだわっています。
「機動力や手ブレ補正が優れていると、野鳥や電車の撮影、運動会など三脚を使えない場面で真価を発揮する。三脚がなくても被写体をよく捉えられるシステムは、それだけ撮影の自由度が高い。他社製品では撮れない写真を提供できる」
―最上位機種「OM―D E―M1X」への評価について。
「高解像度写真を手持ちで撮影できる『手持ちハイレゾショット』や最大7・5段の手ブレ補正など、世界初の技術が多い。自分たちの手で初めての技術を世に送り出すことも、開発陣が大事にしているポイント。日々挑戦をしている」
―人気ブランドの「OLYMPUS PEN」は誕生10周年を迎えました。
「女性を中心に、スタイリッシュだと高評価を受けてきた。デザインや小さい鞄に入るサイズで、持つことを喜んでもらう製品だと思う。『小型・軽量』はPENシリーズとOM―Dシリーズに共通するキーワード。オリンパスの強みであることを各地域で伝えていきたい。ミラーレスカメラの伸び幅が落ち着いて成熟する中で、どのように戦っていくのかがポイントだ」
―ユーザー拡大に向けたポイントは。
「オリンパスのカメラを使ってもらって、気に入ってもらう場面を増やしていく必要がある。今までカメラに興味が無かった人に興味を持ってもらうには、触ってもらうことが重要だ。システムのよさは『このような写真を撮りたい』という思いを実現できること。レンズを変えると撮れる写真が変わる、という楽しさを訴求していく」
―交換レンズ生産の自動化の検討は進めていますか。
「自動化の検討はしている。どこまでするのか、何に適応するかは見極めなければならない。交換レンズは高い精度が必要で、ロボットで置き換えることが難しい領域は多い。自動化をどのように組み合わせるのかも難しい点だ」
最上位機種「同E―M1 Mark Ⅱ」と同じ121点オールクロス像面位相差AFを採用。従来品よりピントの精度や速度を上げた。アルゴリズムも改良。遠近の被写体が混在するシーンでも、狙った方にきちんとピントを合わせられる。
新開発の5軸手ブレ補正ユニットを搭載。最上位機種のユニットを最適化した。小型・軽量化と最大約5・5段分の手ぶれ補正効果を両立した。「5軸シンクロ手ぶれ補正」対応の交換レンズを使用すると、最大約6・5段分の補正効果を得られる。
従来機種の発売は約4年前。プロ向け製品の技術を効率化できるようになり、性能を向上できた。同社によると連写速度は最上位機種の方が優れており、撮影目的で購入動機が分かれるとしている。
日刊工業新聞2019年10月21日
「超望遠との相性がいい」
オリンパスはマイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラを展開してきた。注目を集めるフルサイズミラーレスに対してどのように強みを発揮するのか、杉本繁実執行役員映像事業長に聞いた。(聞き手・国広伽奈子)
―2018年度に生産体制を再構築しました。
「中国の深圳に交換レンズの主力工場を置いていたが、ベトナムや日本に生産移管した。18年は構造改革に集中するために商品発表が思うようにできなかったが、ようやく新製品を出せる体制になった」
―19年度の目標は。
「新しいボディーやレンズを複数発表していきたい。レンズは19年度から毎年継続して複数本を発表する方針だ。工場では生産効率を高めて原価の低減に取り組む」
―ボディー開発の方針を教えてください。
「製品ラインアップのバランスはいい。エントリーモデルとハイモデル、その中間の3領域で引き続き製品を出していく。マイクロフォーサーズの強みを生かして、今以上に小型化・軽量化したシステムも検討している」
―小型化・軽量化に力を注ぐ理由は。
「小さくて軽いシステムは超望遠との相性がいい。特に交換レンズは焦点距離が伸びるほど大きく、重くなりやすい。望遠領域での製品の小型・軽量化は(フルサイズなど)他社との差が際立つ」
―35ミリメートル判換算で焦点距離1000ミリメートル相当という超望遠レンズを開発中です。
「フルサイズのシステムで作ると相当大きなレンズになってしまうだろう。テレコンバーターを使えば最大2000ミリメートル相当まで伸びる点も踏まえると、かなり大きな強みを持つ製品になる」
―手持ち撮影にこだわっています。
「機動力や手ブレ補正が優れていると、野鳥や電車の撮影、運動会など三脚を使えない場面で真価を発揮する。三脚がなくても被写体をよく捉えられるシステムは、それだけ撮影の自由度が高い。他社製品では撮れない写真を提供できる」
―最上位機種「OM―D E―M1X」への評価について。
「高解像度写真を手持ちで撮影できる『手持ちハイレゾショット』や最大7・5段の手ブレ補正など、世界初の技術が多い。自分たちの手で初めての技術を世に送り出すことも、開発陣が大事にしているポイント。日々挑戦をしている」
―人気ブランドの「OLYMPUS PEN」は誕生10周年を迎えました。
「女性を中心に、スタイリッシュだと高評価を受けてきた。デザインや小さい鞄に入るサイズで、持つことを喜んでもらう製品だと思う。『小型・軽量』はPENシリーズとOM―Dシリーズに共通するキーワード。オリンパスの強みであることを各地域で伝えていきたい。ミラーレスカメラの伸び幅が落ち着いて成熟する中で、どのように戦っていくのかがポイントだ」
―ユーザー拡大に向けたポイントは。
「オリンパスのカメラを使ってもらって、気に入ってもらう場面を増やしていく必要がある。今までカメラに興味が無かった人に興味を持ってもらうには、触ってもらうことが重要だ。システムのよさは『このような写真を撮りたい』という思いを実現できること。レンズを変えると撮れる写真が変わる、という楽しさを訴求していく」
―交換レンズ生産の自動化の検討は進めていますか。
「自動化の検討はしている。どこまでするのか、何に適応するかは見極めなければならない。交換レンズは高い精度が必要で、ロボットで置き換えることが難しい領域は多い。自動化をどのように組み合わせるのかも難しい点だ」
日刊工業新聞2019年8月30日に加筆・修正