生命の謎を解き明かす「8万分の1」のウォーリーをさがせ!
「RNA」に注目して日々研究
私のお気に入りの絵本に「ウォーリーをさがせ!」(フレーベル館)シリーズがある。この絵本では、とても込み入って入り組んだ人混みの絵の中から特定の人物「ウォーリー」を見つけ出すゲームをする。みなさんも一度は遊んだことがあるかもしれないが、私もご多分に漏れず、子どもの頃(実は今でも)この本に熱中した。実は私たちの研究室でやっている研究もこれと似たようなことを行っている。
細胞の中では遺伝情報が詰まったDNAゲノムから、RNAがコピーされ、さらにRNAの情報からたんぱく質がつくれるという一連の反応が起こる。このシステムは「生命のセントラルドグマ」と呼ばれる。平たく言うと「一番大事なこと」という意味だ。生き物が大きかろうが、小さかろうが、複雑だろうが、単純であろうが、全く同じルールにのっとっている。私たちの研究室はこの大事なルールの中の「RNA」に注目して日々研究を行っている。
ここで実はRNA研究には大きな問題がある。私たちの細胞の中には約8万種類ものRNAが存在することがわかっている。ちょうど理研がある埼玉県和光市の人口と同じくらいの数である。この中から、ある大事な特徴(例えばたんぱく質合成されやすいもの、されにくいもの)を持ったRNAだけを見つける、ということをしないといけないのが私たちの研究である。
8万種ものRNAを一つひとつ解析して8万回も実験していくと(「ウォーリーをさがせ!」ではそうしているかもしれないが)、時間がいくらあっても足りない。そこで私たちの研究室では「次世代シークエンサー」と呼ばれる最新鋭の機器を用いる。この手法では8万種ものRNAをたった1回の実験ですべてを網羅することができる。この技術を駆使して、どのRNAがどれくらいの効率でたんぱく質に変換されるか、特にリボソームプロファイリングという手法を使って(図参照)、生命の原理は一体どういうものかに迫る挑戦をしている。
たくさんのRNA中から、正解のRNAを見つけたとき、その原理を垣間見たときの喜びは他のものには変え難い。他人にその体験を直接伝えるのは難しいかもしれないけれど、絵本の中のウォーリーを見つけた時と似ているかもしれない。
絵本「ウォーリーをさがせ!」では主人公のウォーリーは世界中の至るところ旅をする。私たちもまさに生命の謎を解き明かす「冒険旅行」の真っ最中である。
(文=岩崎信太郎<理化学研究所岩崎RNAシステム生化学研究室主任研究員>)
細胞の中では遺伝情報が詰まったDNAゲノムから、RNAがコピーされ、さらにRNAの情報からたんぱく質がつくれるという一連の反応が起こる。このシステムは「生命のセントラルドグマ」と呼ばれる。平たく言うと「一番大事なこと」という意味だ。生き物が大きかろうが、小さかろうが、複雑だろうが、単純であろうが、全く同じルールにのっとっている。私たちの研究室はこの大事なルールの中の「RNA」に注目して日々研究を行っている。
8万種が存在
ここで実はRNA研究には大きな問題がある。私たちの細胞の中には約8万種類ものRNAが存在することがわかっている。ちょうど理研がある埼玉県和光市の人口と同じくらいの数である。この中から、ある大事な特徴(例えばたんぱく質合成されやすいもの、されにくいもの)を持ったRNAだけを見つける、ということをしないといけないのが私たちの研究である。
8万種ものRNAを一つひとつ解析して8万回も実験していくと(「ウォーリーをさがせ!」ではそうしているかもしれないが)、時間がいくらあっても足りない。そこで私たちの研究室では「次世代シークエンサー」と呼ばれる最新鋭の機器を用いる。この手法では8万種ものRNAをたった1回の実験ですべてを網羅することができる。この技術を駆使して、どのRNAがどれくらいの効率でたんぱく質に変換されるか、特にリボソームプロファイリングという手法を使って(図参照)、生命の原理は一体どういうものかに迫る挑戦をしている。
生命の謎解明
たくさんのRNA中から、正解のRNAを見つけたとき、その原理を垣間見たときの喜びは他のものには変え難い。他人にその体験を直接伝えるのは難しいかもしれないけれど、絵本の中のウォーリーを見つけた時と似ているかもしれない。
絵本「ウォーリーをさがせ!」では主人公のウォーリーは世界中の至るところ旅をする。私たちもまさに生命の謎を解き明かす「冒険旅行」の真っ最中である。
(文=岩崎信太郎<理化学研究所岩崎RNAシステム生化学研究室主任研究員>)
日刊工業新聞2019年10月21日