生命科学の革命「ゲノム編集」が世界の未来を変える 

おすすめ本の本文抜粋「トコトンやさしいゲノム編集の本」宮岡佑一郎 著

 私達ヒトを含む全ての生物は、遺伝子をもとに形作られ、栄養を取り込んで代謝し、生きています。遺伝子の違いは、ヒトであれば人種の違いや身長の高低などの個性をもたらします。牛であれば肉牛と乳牛の違い、角の有無などが決まります。こうした個性に加えて、通常の生命活動に必要な遺伝子に異常が起これば、病気を引き起こします。
 遺伝子は、物質としては細胞の中のDNAに含まれています。ある生物のDNAが持つ全ての遺伝情報のセットを「ゲノム」と呼びます。つまり、ゲノムが私達ヒトを含め、生物の特徴を決めているのです。
 生命科学研究者はずっと、ゲノムが私達生物の形や性質を決める仕組みの解明を目指してきました。同時に、ゲノムの情報を自在に編集し、生物の持つ特徴を操ろうとも試みてきました。実現すれば、病気の原因となる遺伝子の異常を修復することも、病気に負けない作物や畜産動物の創出も可能になるはずです。実際に、一部の生物種ではゲノムの自在な改変が可能となりました。また、ある遺伝子をゲノムに追加するという限定された編集のやり方で、既に遺伝子組換え作物は流通し、遺伝子治療は一部で成功しつつあります。しかし、生命科学研究者の夢である、「あらゆる生物種の遺伝情報を自由自在に操るゲノム編集」は、なかなか達成されませんでした。

イラスト:小島サエキチ

 この自在なゲノム編集に向けた研究は、2000年代半ばに発展の兆しを見せ、2010年代に入り急加速しました。そして2012年終わり頃から現在にかけて、文字通り「爆発的に」発展しました。2019年現在でもその勢いは衰えていません。ゲノム編集は、基礎研究はもとより、医療、農業、畜産など多岐にわたる分野に革命をもたらしています。(第1章「まずは遺伝の仕組みを知ろう!」P10-11より)

書籍紹介
今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいゲノム編集の本
宮岡佑一郎 著、A5判、158ページ、税込1,620円

「ゲノム編集」という文字を見る機会は増えているのではないでしょうか。医療、農業、畜産といった分野で応用が進み、生活に浸透し始めています。ノーベル賞受賞の有力テーマともされ、研究開発は拡大の一途を辿ります。可能な限り専門用語の使用を控え、わかりやすく解説します。

著者紹介
宮岡 佑一郎(みやおか・ゆういちろう)
埼玉県出身。2004年、東京大学理学部生物化学科卒業。2006年東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。2009年同大学院博士課程修了。博士(理学)。2009年4月、東京大学分子細胞生物学研究所助教。2011年7月、米国Gladstone研究所、UCSFポスドク。2016年1月より、公益財団法人東京都医学総合研究所、再生医療プロジェクト、プロジェクトリーダー(現職)。

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目次抜粋(全67項目)

第1章 まずは遺伝の仕組みを知ろう!
世界が変わる? ゲノム編集技術「生命科学の革命的新技術」
遺伝と遺伝子について知ろう 「遺伝子としてDNA」
DNAってどんな構造? 「二重らせん構造を紐(鎖)解く」

第2章 ゲノム編集の基礎を学ぼう!
ゲノム編集ってそもそもなに? 「DNAの塩基配列を並び替える」
標的遺伝子を狙い撃ち 「遺伝子ターゲティング」
目的遺伝子を外から導入 「トランスジェニック技

第3章 ゲノム編集を可能にするツールとは?
CRISPR/Cas(クリスパー・キャス)の衝撃 「ゲノム編集を広めた立役者」
日本の科学者が最初に発見 「細菌のゲノムDNAの中の繰り返し配列」
どれを使えばいいの? 「ゲノム編集ツールを比較」

第4章 先端技術はどうなっているの?
先端技術を理解するために 「DNAを切らないCas9と融合タンパク質」
標的のDNA配列を可視化する 「緑色蛍光タンパク質(GFP)融合dCas9 」
エピゲノムって何? 「塩基配列とは別に生物の特徴を決めるもの」

第5章 世界を変えてゆくゲノム編集の応用
遺伝子組換え作物 ・畜産動物 「遺伝子を外部から導入する」
がんに対する第4の矢:がん免疫療法 「本庶博士のノーベル賞受賞理由」
生体内ゲノム編集による疾患の治療 「筋ジストロフィーや代謝異常症の治療」

第6章 ゲノム編集のこれから
体細胞で進むゲノム編集による治療 「次世代に伝わらない遺伝情報改変」
ゲノム編集された双子の誕生? 「中国で何が起きたのか」
現段階での受精卵ゲノム編集の問題点 「生殖細胞のゲノムを編集するには時期尚早」

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