グーグルからフェローを招聘したパナソニックが勝負すべき“土俵”

「GAFAの発想は米国特有で、日本がそこで競争すれば失敗する」

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パナソニックの津賀一宏社長

日刊工業新聞2019年10月18日


 パナソニックは17日、米グーグルでバイスプレジデントの松岡陽子氏(48)を同日付で役員待遇の「フェロー」として招聘(しょうへい)すると発表した。松岡氏はグーグルのスマートホーム部門「グーグル・ネスト」の最高技術責任者(CTO)でもあった。

 活動拠点は米シリコンバレーで、技術革新の推進部門「パナソニックβ(ベータ)」の最高経営責任者(CEO)を兼ねる。松岡氏はマサチューセッツ工科大学(MIT)で電気工学とコンピューター科学の博士号を取得。グーグルの研究組織「グーグルX」を立ち上げた一人でもある。

 パナソニックは近年、ソフトウエア開発に力点を置いた企業変革を図るため、外部から人材の登用を進めている。2017年に元日本マイクロソフト会長の樋口泰行氏や独SAPの馬場渉氏を招いた。

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中村邦夫元社長インタビュー


日刊工業新聞2019年3月20日掲載より加筆


 パナソニックの中村邦夫特別顧問は2000年代初め、経営理念を除き聖域なき改革の断行で当時の経営危機を脱し、V字回復を達成した。“経営の神様”と言われる松下幸之助氏が同社を創業して100年を越えた今、厳しい環境変化の中で企業の守るべきものを聞いた。
                     

規模を追う意味ない


 -『破壊と創造』という強い言葉で、構造改革を進めました。
 「何事も破壊する時は一番批判が高まる。1万3000人のリストラに、私は当然悩んだ。創業者の思索の場だった『真々庵』で決断したことを覚えている。社長は創業者の分身。経営理念と自分の決断は合っているのか、常に考えた。ただ、技術などは猛スピードで進化する。時には理念を乗り越え、新しいものを創る必要がある」

 -社長退任後、リーマン・ショックなどで業績は再び低迷しました。
 「私はある程度『破壊』はできたが、新事業を開発して成長する『創造』に課題を残した。独自技術に裏打ちされた強い体質を持ち、事業創造できる会社にできなかった。当時『電機メーカー10兆円の壁』という言葉もあったが、規模を追う意味はない。大事なのは強い体質だ」

幸之助さんが大好きで入社した


 -人材の流動化によって、日本企業のあり方は変わりそうです。
 「私は幸之助さんが大好きで入社した。『企業は社会の公器』と話し、無償でラジオの特許を公開するなど、常に公を念頭にした経営に、感銘を受けた。今の人は『若い時は苦労しろ』という私のような考えを嫌うかもしれないが、創業者の理念を知らずに企業活動していいのだろうか。一方、事業で成功しなければ、良い人材は集まらない。事業で成功し、理念に共鳴する真面目な人材を集め、大事にしてほしい。そういうグループにしてもらいたい」

 -雇用関係や働き方は米国流に近づくのでしょうか。
 「米国は契約社会で、個人と会社の関係はお互いに厳しい。申告した成果を達成できなければ辞めてもらう社会だ。日本は曖昧なところが良くない。上司と部下のお互いにとってもったいない。契約社会になるべきではないか。部下が年間の目標を立て、達成すれば給料を上げるという契約をする。その目標に向けて仕事をすれば、上司は不要な干渉をしなくなる。パワハラはなくなり、若い人は成長する。その上で、思いやりなどの日本的な良さを残してほしい」

厳しい環境を恐れるな


 -若手社員に期待することは。
 「若い人は他人のせいにせず、自分が頑張ってほしい。最初は言われた通りに真面目にやり、自ら進んで貢献してほしい。これが私の念願だ」

 「一方、スマートフォンに依存する人が増え、考える力の衰えが懸念される。鍛えるには読書がいい。偏らず、いろいろな本を読んでみてほしい。最近、私は幕末史を読む。若い人が日本の大きな構造改革を成し遂げた、すごい時代だったとあらためて感じる」

 -企業のビジネス変革には何が必要ですか。
 「各企業が厳しい環境を恐れず挑戦すれば、それぞれの企業の中に変革できる人材、英雄が出てくると信じている。それには苦戦した方がよく、不況になった方がいいかもしれない。当社も何度もつぶれかけ、創業者以外にも、井植歳男さんや高橋荒太郎さんなど救世主が現れた」

日本の土俵で勝負を


 -変革に向けて、経営陣などの若返りは必要でしょうか。
 「大企業も含めた企業全般において、30代や40代の人が社長をやるような時代に早くなってほしい。それくらい変わっていかなければならない」

 「私が社長に就任した00年、メールのできる携帯電話が登場して、コミュニケーションが大きく変わった。技術進化が人間社会と企業経営に極めて大きく影響した。だが、個人も組織も進化に対応できていなかった。この時、順応が早かったのは若い世代だ。この世代が力を発揮できる会社にしなければいけないと思った」

 -グーグルやアップルなどの「GAFA」と称されるIT大手の台頭で、国内電機産業は進む道を模索しています。
 「日本の電機は自信喪失気味ではないか。経営学者のピーター・ドラッカー氏は『日本人の特質は物を小さくすること』と端的に語った。要するに製造業だ。ある企業は、家庭用ビデオカメラの試作品を水に沈め、出てくる泡で小さな空隙も探すほど小型化への執念があった。この特質は今後も世界の競争に打ち勝つ。GAFAの発想は米国特有で、日本がそこで競争すれば失敗する。土俵を変えなければならない」

世界が期待するもの


 「日本の土俵は製造業だ。パナソニックはトヨタ自動車と提携し、電気自動車(EV)の時代を一緒に飛躍させようとしている。世界にない電池の品質、機能を目指す。GAFAと競争せず、日本にしかないものを生み出すべきだ。製造立国に立ち戻り、成功企業が出てくることを世界も期待している。創造には独自技術の強みに加え、奇想天外な発想も必要だろう。GAFAによる支配など、今の人は心配しすぎだ」

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