独立心の強いスバルがトヨタグループ入り、“クルマ愛”で関係深める

スバル(当時富士重工業)とトヨタの共同開発スポーツカーラインオフ式典(2012年)
 SUBARU(スバル)が、トヨタ自動車グループ入りする。トヨタからの出資比率を約17%から20%以上に引き上げることで合意し、持ち分法適用会社になる。変革期を迎えた自動車業界で1社での生き残りが難しくなる中、長年の提携関係で培った信頼と、惜しみない車への愛という共通点が両社の関係を深めた。一方、グループ内でスバルが存在感を高めるためには、得意の4輪駆動(4WD)技術を磨き上げることが第一条件になる。

 さかのぼること約7年前、スバルはトヨタからの出資がマイナスに働き、事業計画が頓挫する憂き目にあっていた。中国・奇瑞汽車と合弁会社を設立し現地生産に乗り出す計画だったが、当局から待ったをかけられた。

 中国では外資メーカーの現地での合弁相手は2社までとの規制がある(22年に撤廃予定)。すでにトヨタは2社と提携しており、当局はスバルと奇瑞の合弁はトヨタグループで3件目に当たると主張したのだ。当時、スバル首脳は「グループといわれるのは20%以上の出資を受けた企業でしょう。うちはトヨタグループではない」と語気を強めていた。

 そんな独立心の強いスバルが今回、トヨタグループ入りを決めた。背中を押したのは「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」と呼ぶ技術・サービスの新潮流。乗り越えるには巨額な開発費を分担できるパートナーが不可欠だ。そんな情勢が強まる中で長年隣にいたのはトヨタだった。

 スバルは05年、トヨタの出資を受け入れた。トヨタ車の受託生産やスポーツカー「トヨタ86/スバルBRZ」の共同開発などを通じ互いの理解を深めてきた。

 トヨタは一方的にスバルの独立性を脅かすような無茶はしないだろう―。積み重ねた信頼関係がスバルの決断を後押しした。中村知美社長は今後も「顧客を裏切らない。車作りでトヨタ化はしない」と強調する。

 両社は車への愛を惜しみなく語る点が共通する。豊田章男トヨタ社長は「愛車」という言葉が好きで「愛が付く工業製品は車だけ」と繰り返し語る。

 スバルは米国販売が、9月まで93カ月連続で前年比プラスの成長を続ける。その原動力の一つとなっている顧客開拓の名称は「LOVEキャンペーン」だ。また16年発売の新型「インプレッサ」のキャッチコピーは「愛で選ぶクルマが、ある。」だった。こうしたスバルの姿勢に「豊田社長はシンパシーを感じていた」(業界関係者)という。

 両社は今後の業務提携内容として4WDモデルや次期「86/BRZ」の共同開発、トヨタのハイブリッド車(HV)システムのスバル車での採用拡大、コネクテッド・自動運転領域での協力をあげた。

 トヨタが世界販売約1000万台に対しスバルは約100万台と規模に開きがある。シナジー創出という観点ではトヨタが与え、スバルが得るメリットの方が大きいように映る。

 だが、スバルから与えるものもある。特に有望なのは4WD技術だ。スバル車の技術的価値は端的に言えば水平対向エンジンと、4WDに集約される。電動化の進展で水平対向エンジンの価値は薄れていく方向で、相対的に4駆技術の重要性が高まっていく。

 豊田社長はスバルの同技術について、「素晴らしさを肌で感じてきた」とコメントし期待感を示した。互いに強みを与え合い、電気自動車(EV)や自動運転車の価値を高めるように4駆技術を磨き上げていければ、スバルとトヨタの車への愛は互いへの愛に発展するに違いない。
(取材・後藤信之)

2019年10月07日

関連する記事はこちら

FEATURE