IT人材不足の解消へ一手、都立高校から即戦力

東京都教育委員会が教育カリキュラム

19日に都立町田工業高校で実施したIT人材育成授業(東京都教育庁提供)
 東京都教育委員会は不足しているIT人材を計画的に輩出していくため、日本IBMと日本工学院八王子専門学校と連携し、都立高校と専門学校による5年間の新たな教育カリキュラム作成に乗り出した。19日には日本IBMの社員が都立町田工業高校の2年生に具体的なプログラミング言語を教える授業を初めて実施するなど、都立工業高校から即戦力となり得るIT人材を育成するための試行授業も始まった。新しい学習指導要領がスタートする2022年度までに、この取り組みを本格スタートする。(大塚久美)

計画的に育成


 国の調査によると、30年には約79万人のIT人材が不足すると推計されている。都教育委員会は高校、専門学校が連携し、民間企業がその教育を支援することでIT人材に必要な知識と社会人スキルも育成する新たなプログラムの開発に入った。協力する企業側には、常にITの世界で活躍する能力を有した人材を学校教育の中で支援し、育成できる利点がある。

 まず、大学教授らを交えた「工業高校、専門学校、企業等の連携におけるIT人材の育成に向けた検討会」(委員長=宇田剛都教育庁教育監)の初会合を8月29日に開催した。検討会では、協力企業や実施する高校数を増やすこと、都内のみならず「全国的な取り組みとしていきたい」、との強い意気込みも語られた。理念や人材像のほか、今後の具体的な方向性などの議論を公開で行い、20年3月までに報告書としてとりまとめる計画だ。

 これらの背景を踏まえ、9月19日にIT人材育成プログラム開発への試行的な取り組みとして、企業による授業を開いた。講師は日本IBMの社員6人が務め、普段授業を担当する教員はサポートに回り、町田工業高校総合情報科2年生32人を習熟度別に3班に分けて実施。当日使った教材は同社の社員が手作りしたもので、生徒たちと討論をしながらプログラミング作成した。先端企業の社員による授業を受け、自分が作ったプログラムが動く喜びを知るなど、生徒にとっても普段にはない体験となった。

興味引き出す


 生徒には4月から「働くことの意味」やITへの興味を高めるため、日本IBM社員がメンタリングを行っており、学習意欲を事前に引き出した上での授業となった。日本IBM社員はボランティアでの参加で、「生徒たちから多くの刺激を受け、仕事への活力となる」「生徒たちの興味をどうやってもっと引き出すかが課題だ」といった声もあった。10月にはネットワークとソフトウエア、11月にはハードウエアに関する授業を同校で行っていく予定だ。

 小池百合子都知事は8月29日、第5世代通信(5G)重点整備を進める「東京データハイウェイ構想」を公表した際、IT専門人材の採用も検討すると言及した。社会インフラの整備とともにIT人材の育成にも取り組むことで東京から超スマート社会「ソサエティー5・0」が進むことが期待される。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)の進展でIT人材への需要が増加するとの見込みもあり、東京都の採用試験においても新たにIT採用枠が設けられる。都立高校でしっかり学んだ人材が、都の職員として活躍する日も近い。

               

日刊工業新聞2019年9月30日

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