3歳からプログラミング教育は必要?早くから身に付けておきたい力とは

【連載】進化する幼児教育 第1回 プログラミング教室

 「2020年に小学校でプログラミングが必修化」。このニュースに焦りを感じた保護者や教育関係者は多いだろう。自分自身がプログラミングスキルのない中で、子供たちにきちんと教育を受けさせ、サポートすることはできるのだろうか。小学校での授業以外でも習い事としてプログラミング教育を受けさせた方がよいのだろうか、など悩みは尽きない。
 Knocknote(ノックノート)(東京都新宿区)は3歳から通えるプログラミング教室を開講している。IT人材不足問題が顕在化しているが、教育現場ではまだまだプログラミングを教えられる人材は少ない。そこに課題を感じて2017年1月に起業したのが鈴木道生社長だ。現在、幼児~中学生、さらには大人向けと幅広い層に向けた授業を行っている。
小学校中学年や高学年スタートの教室が多い中、なぜ3歳からのコースを開講しているのか、どのような効果が得られるのか。鈴木社長と授業を担当する木下氏に話を伺った。

鈴木道生社長

なぜ3歳から?


―3歳という低年齢でもプログラミング教育ができるのですね。
木下氏
 3歳くらいまでに脳の構造がだいたい完成すると言われています。幼稚園や保育園では社会性を育てるような授業やプログラムは多く行われていますが、科学的思考や論理的思考を育てるような授業は少ないのが現状。「数をかぞえる」「カテゴリ分け」「同じものを探す」などの論理的思考は3歳から養うことが重要です。このあたりから指導し、プログラミングへとつなげています。

―3歳からのプログラミング教室ではどのような授業を行っているのですか。
木下氏
 体験教室でははじめに説明することはせず、ロボット教材を動かしてみせます。動いたり止まったりする様子にまず興味を持ってもらうためです。紙上に描かれた黒い線に沿って走る「オゾボット」や、まっすぐ進んだり曲がったりするパーツを組み合わせて走る芋虫型の「コード・ア・ピラー」を使用しています。それらが前に進んだり、曲がったりする様子を見ることで、「どうしてそうなったのか」を自分なりに考えてもらいます。そしてロボットに指示をしてゴールまで動かす、という簡単な課題に一緒に取り組んでいきます。帰るころには自分の言葉で「なぜそう動くのか」説明できるまでになりますよ。

「コード・ア・ピラー」

オゾボット

―授業で大切にしていることは。
木下氏
 まずは「不思議だな」と興味を持ってもらうこと、さらに課題をクリアすることを繰り返し「できた喜び」を重ねてもらうことです。

鈴木氏 小学生向けの授業でも共通して言えることなのですが、コミュニケーションを重視しています。幼児クラスでは保護者も一緒に授業を受けられるので、子供と一緒に課題に意見を出し合いながら取り組んでもらっています。

―子どもは集中力が続かず飽きてしまうことも多いのでは。
木下氏
 例えば保護者にゴール地点に立ってもらい、「あそこまでロボットを動かせるかな?」と課題を出すなど、保護者の方に参加してもらいます。「保護者に褒められたい」というのが動機づけとしては強く働くので、やる気を出して取り組む姿が見られます。また教材をロボットからパソコンを使ったソフトに変えるなど使い分けも行っています。

―幼児でもパソコンを使って授業を行うのですね。
木下氏
 マウスの扱いに慣れれば大丈夫ですよ。実際にモノを動かすことも大事ですが、パソコンを使うメリットもあります。
この世代の子供に見られる傾向として、「ルールやプロセスを重視しない」ということがあります。例えば迷路でうまくいかない箇所を飛ばしたり、ロボットを手で動かしたりしてゴールに行ってしまいます。しかしパソコン上だとプロセスが合っていなければゴールできません。プロセスまで考えて課題解決することは論理的思考を養うためにも不可欠な要素なので、パソコンでの学習も重視しています。
マウスを使って課題に取り組む


知識以外に身につくこと


―思い通りにいかなかったとしても、粘り強く取り組む力も必要です。
木下氏
 プログラミング教育によって自分をコントロールする力を養うことができます。ただ飽きたからと指導側が対応してばかりだと、「考えを自分で操作する」「注意を持続する」といった論理的思考につながる力が身に付きません。自分をコントロールする力は後々の学力向上につながるので、指導する側もメリハリをつけて時には厳しく指導しています。

鈴木氏 保護者からも「子どもに自主性が生まれてきた」「ものごとを逆算して考えたり、計画して取り組んだりするようになってきた」という声を聞きます。また筋道を立てて説明できるようになったという声も多く、例えば将棋をやっている子は自分の手についてより明確に説明できるようになったそうです。

―幼児から小学生向けクラスにステップアップすると、授業の内容はどう変わりますか。
木下氏
 5~6歳からはスクラッチ開発に移行し、簡単なゲームなど、自分で何をつくるか計画してプログラミングに落とし込みます。自由度が増していい意味で「脱線」できることも力を伸ばすことに一役買っています。

―プログラミングの他にもたくさんのイベントを開催しています。
鈴木氏
 単発のイベントとして電子工作や自由研究のための講座などを行っています。最近ではyoutuberに憧れる子どもが増えているので動画編集を学ぶイベントを開催し、盛り上がりました。小規模ならではのスピード感を生かし、これからも新しいことにチャレンジしていきます。その姿勢が子どもたちにも伝わると思っています。

実際の授業は何をする?


 実際の授業を取材した。授業を受けるのはもうすぐ6歳になる年長の女の子。昨年10月から受講している。一緒に来た両親は「論理的思考を身に付けさせたいと思い、受講した」という。
 まずサッカーボールをゴールへシュートするゲームに取り組んだ。ゴールまでのボールの動きを変化させるために、ボールの速度を制御する数値を変えてみる。「今の数値からいくつ引けばいいか」など足し算引き算も学びながら進めていく。引き算はまだ習っていないと言っていたが、ゲームに取り組む中でしっかりと理解することができた。その後、進行方向や距離を指示したブロックを並べることでキャラクターをゴールまで進めるゲームや、前述のオゾボットを使ったゲームで「動きを指示し決められたルール通り動かす」ことを学んだ。

矢印のブロックをつなげて迷路をクリアする

 この日の授業ではパソコンやロボットを使って6つほどのゲームに取り組んだ。論理的思考の基礎力を高めるだけでなく、算数や数の概念も実際に手を動かしながら学んでいた。1時間の授業で一度も休憩せず集中して取り組み、「もっとやりたかった!」とニコニコしながら授業を終えた。見学していた両親も「前回よりうまくなっている」「習っていない引き算ができた」と驚いていた。

 「2030年には78.9万人のIT人材が不足すると言われているが、教育現場ではプログラミングを教えられる人材がまだまだ少ない」と話す鈴木社長。しかしプログラミング教育へのニーズは増加しており、プログラミング教室の増加がそれを物語っている。現在、プログラミング教室は急激に増加しており、大手企業も次々と参入している。2013年には約750教室だったが2018年には約6倍の4457教室に増加、2023年には1万教室以上に達するという。

出典:コエテコ byGMO×船井総研

 ベネッセ教育総合研究所の乳幼児向け習い事の調査では、習い事の上位にはスイミング、体操、英会話などが並ぶ。まだプログラミング教室に通っているとの回答はごく少数のため項目も立てられていないが、今後確実に増えていくことが予想される。2023年には習い事の上位にランクインしているかもしれない。


【連載】進化する幼児教育ビジネス
 2020年の小学校での英語、プログラミングの必修化などの動きを受け、ニーズや保護者の意識が変化している「幼児教育」にスポットを当て、事例や現状を取り上げていきます。

ニュースイッチオリジナル

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

取材に協力していただいた6歳の年長さんは、授業の中で足し算引き算や小数点、1000や1万などの大きな数字も自然と理解できていました。授業の合間にはプログラミングだけでなく、パズルを使って見本と同じ形を作るというような遊びも交えており、集中力を切らさない工夫がされていました。

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