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同級生の佐藤優氏著書「信念貫く姿に感嘆する」

農林水産事務次官・末松広行氏インタビュー
 現在、「農福連携」が政策としてクローズアップされ、各地で動きが広まっている。障がい者の方々に農業の現場に入ってもらうことで、障がい者にとってはきちんとした給料を得ることと生きがいを持って働いてもらうこと、農業側は貴重な労働力の確保につながる。

 この政策を進めようと議論しているとき、『農福連携による障がい者就農』(近藤龍良著)を読んだ。近藤氏本人が実際に携わり、その効果と大変さを書いた書籍だ。6年前に出版された。新しい政策を打ち出すとき、その分野で以前から活躍している人の「今の考え」をヒアリングすることと、数年前にどう思っていたかを著書で確認するという両方が必要だ。

 『誰も農業を知らない プロ農家だからわかる日本農業の未来』(有坪民雄著)は、農業現場から政策をどう考えているかが書かれている。ただ批判するのではなく、その政策によってどういう影響があったのかをしっかり分析している。ポジティブな面が評価されていると勇気づけられるし、参考になる。現場で活動されている方が書いたものは目線が違い、勉強になる。

 高校の同級生である佐藤優氏の本は欠かさず読む。ともに学生生活を送っていた身からすると、彼が経験したことを知ると「自分だったらどう行動しただろうか」「同じようにできただろうか」と考えてしまう。彼は意志も強く、信念がある。

 さまざまな著書があるが、最初に出版された『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』は1番面白く、何度も読み返している。彼は「有罪にならないように」ではなく、自分が関わった機密事項や外交関係者のことを考え、信念を貫いて行動する。自分の身だけが助かればいいということではない価値観を持って、ベストを尽くす姿には感嘆する。いろいろなことに迷った時に読むと、信念を貫くためにはどういう風に考えたらいいのか、再確認できる。(昆梓紗)
 
日刊工業新聞2019年9月23日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
政策を進めていく際に専門の分野とは違うジャンルの本を多読することを重視しているといいます。「まったく違う本であっても、日本の未来に関して通ずるものが見え、はっとすることがたくさんある」(末松氏)。同様に経済産業省への出向は良い経験だったと振り返ります。 次官のポストにいると月に20冊近く本を贈られるので、忙しい合間での読書。気になった本は家に持ち帰り、トイレで読んだりしているそう。

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