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農機の自動走行、2020年までの実用化へ課題は

準天頂衛星「みちびき」対応
農機の自動走行、2020年までの実用化へ課題は

クボタの直進キープ機能付き田植機

 農林水産省は、ロボットや情報通信技術(ICT)などを活用した農業機械開発について、2020年までに遠隔監視による無人システムの実用化を加速する。農業用トラクターでは大手農機メーカーが自動走行システム搭載型の販売を始めたほか、田植機でも直線キープ機能付きなどを発売している。さらに無人化に向け、人の検知技術の評価手法の開発や準天頂衛星「みちびき」に対応する安価な受信機の開発などを進めている。

 農機の自動走行の研究開発では、18年までに全地球測位システム(GPS)を活用して有人監視下で圃(ほ)場内の農機の自動走行システムの市販化や、20年までに遠隔監視下での無人システム実現を目指している。

 農水省は17年3月に「農業機械の自動走行に関する安全性確保ガイドライン」を策定。これを踏まえ、クボタが1人で複数台を操作できる自動運転のトラクターを発売。さらにヤンマーも18年10月に同様の機能を装備したトラクターを発売するほか、井関農機も発売を計画している。

 これらトラクターは人間を検知するシステムを搭載している。ただ、無人システムを目指す上で、トラクター、田植機、コンバインなど各農機の使用条件に合わせ、より高精度で確実に検知可能なシステムが求められる。

 このため農水省は人の検知技術の評価手法開発に着手。同技術では自動車で先行してレーザー、画像処理などの手法が実用化されている。今後、各種農機に適切に転用できるように評価手法が必要としている。

 また、田植機ではクボタが自動で直線走行できる機能を実用化済み。田植機の自動運転技術の開発も進んでいるが作業面の段差といった条件が厳しい。安定走行を確保するにはさらに高い作業精度や熟練者並みの直進精度の確立が課題だ。

 無人システムの実現には、高い精度の測位システムが不可欠になる。普及に向け対応システムの低コスト化も求められる。

 農機に搭載するGPSでは通常、高精度衛星測位システム(RKT―GNSS)が活用されているが、現状では位置情報を補正するための基地局が必要。山間部や防風林近くで精度が落ちるのも難点だ。

 そこで18年度から運用が始まる準天頂衛星「みちびき」への対応を進める。基地局の設置が不要になる上、山間部でも精度を確保できるという。
日刊工業新聞2018年7月6日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
普及促進の視点から安価な受信機の開発を急ぐ。 (日刊工業新聞社・井上雅太郎)

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