日産の工場で動き出した、火山灰で廃水処理するベンチャー技術の凄さ

HALVOホールディングスが開発した凝集剤「きよまる君」を採用

 日産自動車が、横浜工場(横浜市神奈川区)の廃水処理に、HALVOホールディングス(東京都千代田区)が開発した凝集剤「きよまる君」を採用することになった。鹿児島県の火山灰が主成分の同凝集剤は、廃水から汚れを分離するスピードが速い。塗装業をルーツとするベンチャーが、技術革新の余地がないと思われていた廃水処理のコストを低減する。(文=編集委員・松木喬)

 白い粉末のきよまる君をひしゃくですくい、廃液がたまったタンクに次々と投入する。しばらくしてタンクの水を取り出すと、投入前は濁っていたが、投入後は水面に灰色の固形物が集まり、液体は透明に近づく。

 廃液は横浜工場で金属の切削に使ったクーラント液だ。きよまる君投入後、水中の汚れが凝集して浮上した。これまではクーラント液は外部の業者に処理してもらっていた。きよまる君によって工場内で廃液から汚れを回収できるようになる。現在試験中だが、日産は導入によって年300万円の処理コスト低減を見込む。

 汚れはマイナスに帯電している。プラスに帯電したきよまる君に汚れを引き寄せ、凝集する仕組みだ。HALVOの永原一佳社長は「火山灰をプラスに帯電させる技術がある」と話す。同社のルーツは鹿児島県の塗装業者。塗装廃液の処理に困った創業者が火山灰に出会った。天然鉱物を混ぜ、火山灰表面の無数の穴にプラスの電荷を大量に入れる「レシピを完成させた」(永原社長)という。

 当初、途上国で飲料水の製造に使おうと考えたが、水は安価での供給が求められるため、採算が合わないと分かった。そこで製造業の廃水処理への提案を始めた。安定した生産量にめどがついた段階で、衛生的な水の確保に困っている地域にも貢献したいと考える。

 INCJ(旧産業革新機構)の仲介で日産に紹介できた。日産パワートレイン生産技術開発本部の竹内宏治主担は当初、「本当なのかと疑った」というが効果を確認して納得した。きよまる君は前処理不要で危険物でもなく、設備改造の必要もない。工務部の藤田貴行氏も「目からうろこだった」と語る。廃液は規制を守って処理することが優先され「新技術に挑戦する機会が少なかった」(藤田氏)という。

 今後、日産は他の廃液への応用や、凝集した汚れを沈める方法の研究など、HALVOに提案していく。ベンチャーにとって大手製造業の声は貴重であり、開発に反映できる。2社はオープンイノベーションに取り組み、鹿児島県にとって厄介者の火山灰を環境保全に役立てる商品に変える。

日刊工業新聞2019年9月11日

松木 喬

松木 喬
09月25日
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黄色い塗料を入れたペットボトルにきよまる君を混ぜ、振ってみると、水が透き通り、黄色い物体が浮上するデモを見ました。あっという間でした。厄介者の火山灰が、環境保全、企業のコスト低減に役立ちます。

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