「EMOハノーバー」の工作機械はエモかった!
日本の展示、欧州顧客の感情を揺さぶる
ドイツで16日から21日まで開催された欧州国際工作機械見本市「EMOハノーバー2019」には、世界初披露となる新規開発の技術や製品が数多く持ち込まれた。欧州での新たな市場の開拓や事業の拡大を狙うほか、思い通りに進んでいなかった欧州での事業展開で巻き返しを図る製品もある。展示製品・技術から日本企業の戦略を探る。
ファナックはナノメートル(ナノは10億分の1)領域の金属加工ができる精密加工機2機種を出展した。旋盤型の「ロボナノα―NTiA」をEMOでは初めて実演した。
同社最上位の数値制御(NC)装置やサーボシステム、スピンドルモーターなどを採用。精度と信頼性を高めるため、主軸に内製の空気静圧軸受を搭載した。0.1ナノメートルの指令、直線・割出軸の油静圧軸受で高品位の加工を目指す。第5世代通信(5G)関連の隠れたコア技術として、市場拡大が期待できるスマートフォンや車載用レンズなどの金型向けの需要を取り込む。
DMG森精機はこれまで大規模な見本市に新型の工作機械を大量に投入してきた。今回は工作機械のワールドプレミアが2台と少なかった。ただ、出展する機械の半数以上に先端の自動機器・システムが付いたほか、さらに30点超もの新しいデジタル技術を披露した。
無人搬送車(AGV)「PH―AGV50」は、ロボット付きで加工物を搬送する前年の製品とは異なり、フォークリフトのような形状。棚の大物加工物をパレットごと取り出して運び、工作機械内に置く。DMG森精機は、同AGVを主力工場の伊賀事業所(三重県伊賀市)など世界各地の自社拠点に配置していく計画だ。
アマダホールディングス(HD)は、欧州でバンドソー(帯のこ盤)の製品群を拡充する。バンドソーや研削盤を扱うアマダマシンツール(神奈川県伊勢原市、田所雅彦社長)は、ダイヤモンド刃で石英ガラスやセラミックスなどを切断する「DBSAW―500」を参考出品した。
市場調査を目的とした展示で、欧州の半導体業界向けなどでニーズを探る。最大加工寸法の500ミリ×500ミリメートルの石英ガラスでの実演を披露。また、のこ刃を傾斜させてパイプ材や角材を斜めに切る米国製の立型「VT4555M」も紹介する。
オークマは5面加工の「MCR―S」で門型マシニングセンター(MC)を欧州の展示会で28年ぶりに出展した。欧州では大きな加工対象物(ワーク)に対し、ワークを固定して主軸側が動くガントリーと呼ぶ加工機を使うのが一般的。
「門型MCの世界の累計販売実績の中でも、欧州の実績は少ない」と欧州を統括する山本武司常務は打ち明ける。欧州に再度チャレンジするのは、欧州での評価を気にする中国ユーザーが多いため。ドイツ販売総代理店の子会社化もしており、今後は欧州で門型に限らず工作機械全般を拡販する。
ソディックは10月に射出成形機の欧州販売を始める。会場では主力製品の放電加工機、高精度加工のMCのほか、型締め力100トンの電動型射出成形機「MS100」と金属3Dプリンター「OPM250L」を展示した。
両装置を使い、金型と成形品を製造する一体システムを提案する。欧州には世界的な射出成形機メーカーが多いが、可塑化部と射出部が分離した機構は高精度品に向き、同社は「欧州勢にも同じ構造はない」という。医療分野の企業が集まるアイルランドなどで精密な医療部品向けに売り込む。
スギノマシン(富山県魚津市)は金属積層造形(AM)機能を搭載した小型同時5軸MC「XtenDED」を世界で初めて披露した。AM機能の開発自体も同社では初めてとなる。
得意のウォータージェットマシンで培ったコンパクト設計により、付属機器を含めた設置スペースは約7.8平方メートル。AM・同時5軸制御MCの複合加工機では業界最小クラスとなったのが特徴だ。「ウォータージェットと顧客先は異なる。用途はこれから開拓する」と杉野良暁社長は力を込める。事業領域を広げる新たな技術として育てる考えだ。
(独ハノーバー=村国哲也、六笠友和、西沢亮)
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ファナック
ファナックはナノメートル(ナノは10億分の1)領域の金属加工ができる精密加工機2機種を出展した。旋盤型の「ロボナノα―NTiA」をEMOでは初めて実演した。
同社最上位の数値制御(NC)装置やサーボシステム、スピンドルモーターなどを採用。精度と信頼性を高めるため、主軸に内製の空気静圧軸受を搭載した。0.1ナノメートルの指令、直線・割出軸の油静圧軸受で高品位の加工を目指す。第5世代通信(5G)関連の隠れたコア技術として、市場拡大が期待できるスマートフォンや車載用レンズなどの金型向けの需要を取り込む。
DMG森精機
DMG森精機はこれまで大規模な見本市に新型の工作機械を大量に投入してきた。今回は工作機械のワールドプレミアが2台と少なかった。ただ、出展する機械の半数以上に先端の自動機器・システムが付いたほか、さらに30点超もの新しいデジタル技術を披露した。
無人搬送車(AGV)「PH―AGV50」は、ロボット付きで加工物を搬送する前年の製品とは異なり、フォークリフトのような形状。棚の大物加工物をパレットごと取り出して運び、工作機械内に置く。DMG森精機は、同AGVを主力工場の伊賀事業所(三重県伊賀市)など世界各地の自社拠点に配置していく計画だ。
アマダHD
アマダホールディングス(HD)は、欧州でバンドソー(帯のこ盤)の製品群を拡充する。バンドソーや研削盤を扱うアマダマシンツール(神奈川県伊勢原市、田所雅彦社長)は、ダイヤモンド刃で石英ガラスやセラミックスなどを切断する「DBSAW―500」を参考出品した。
市場調査を目的とした展示で、欧州の半導体業界向けなどでニーズを探る。最大加工寸法の500ミリ×500ミリメートルの石英ガラスでの実演を披露。また、のこ刃を傾斜させてパイプ材や角材を斜めに切る米国製の立型「VT4555M」も紹介する。
オークマ
オークマは5面加工の「MCR―S」で門型マシニングセンター(MC)を欧州の展示会で28年ぶりに出展した。欧州では大きな加工対象物(ワーク)に対し、ワークを固定して主軸側が動くガントリーと呼ぶ加工機を使うのが一般的。
「門型MCの世界の累計販売実績の中でも、欧州の実績は少ない」と欧州を統括する山本武司常務は打ち明ける。欧州に再度チャレンジするのは、欧州での評価を気にする中国ユーザーが多いため。ドイツ販売総代理店の子会社化もしており、今後は欧州で門型に限らず工作機械全般を拡販する。
ソディック
ソディックは10月に射出成形機の欧州販売を始める。会場では主力製品の放電加工機、高精度加工のMCのほか、型締め力100トンの電動型射出成形機「MS100」と金属3Dプリンター「OPM250L」を展示した。
両装置を使い、金型と成形品を製造する一体システムを提案する。欧州には世界的な射出成形機メーカーが多いが、可塑化部と射出部が分離した機構は高精度品に向き、同社は「欧州勢にも同じ構造はない」という。医療分野の企業が集まるアイルランドなどで精密な医療部品向けに売り込む。
スギノマシン
スギノマシン(富山県魚津市)は金属積層造形(AM)機能を搭載した小型同時5軸MC「XtenDED」を世界で初めて披露した。AM機能の開発自体も同社では初めてとなる。
得意のウォータージェットマシンで培ったコンパクト設計により、付属機器を含めた設置スペースは約7.8平方メートル。AM・同時5軸制御MCの複合加工機では業界最小クラスとなったのが特徴だ。「ウォータージェットと顧客先は異なる。用途はこれから開拓する」と杉野良暁社長は力を込める。事業領域を広げる新たな技術として育てる考えだ。
(独ハノーバー=村国哲也、六笠友和、西沢亮)
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日刊工業新聞2019年9月19日の記事を一部修正