日本のSDGs「残念ながら欧州に比べ、周回遅れ」

NELIS代表理事/ピーター D.ピーダーセン氏
―国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関する指南書を竹林征雄氏と共著しました。日本の取り組みへの評価は。

「残念ながら欧州に比べ、周回遅れと言わざるを得ない。SDGsは2015年に国連で採択された。欧州ではいち早く取り組みが始まったが、日本はこの1、2年でやっと知られるようになった。しかし、日本は第2ラウンドからの巻き返しが速い国だ。最近、日本では上着の襟に付けるカラフルなSDGsバッジをよく見かけるが、他の国では見たことがない。日本ほど書店にSDGsの本が並んだ国もそうはない。今がまさに第2ラウンドの時期にある」

―SDGsは17の目標と169のターゲット(下位目標)があり幅が広すぎてわかりにくい面があります。どう捉えればよいですか。

「主に三つの層で構成される。土台となる一番下の層が環境、その上が社会、さらにその上が経済という層だ。ウエディングケーキのような形をしており、例えば一番下には目標13の気候変動や目標6の水が、真ん中には目標1の貧困撲滅や目標4の教育、頂上が目標8の経済成長や目標9の技術革新がくる」

―企業は何から始めればよいですか。

「自社が力を発揮できる目標から手をつければよい。すべてに取り組む必要はまったくない。とはいえ、業種によって避けられない目標もある。例えば食品業界なら持続可能な農業に触れた目標2、エネルギー業界ならエネルギーをテーマにした目標7は外せないだろう」

「留意点は現状の自社の取り組みを単に目標に当てはめるだけで終わってはいけないということだ。今まで以上の何かに取り組まないといけない。現状維持では世界の貧困などの問題を解決できないからこそ17の目標がある。現状プラスαの取り組みをしなければ意味がない」

―本の中で『トレード・オン』という考えを提唱しています。具体的にどんな意味ですか。

「自社の事業拡大と環境や社会との調和が相反する『トレード・オフ』ではなく、両者が同じベクトルにあるという意味だ。例えばサプライチェーンの末端で児童労働が起きたり、環境破壊につながる行為があったりすればトレード・オンではない」

「成功している良い例がトヨタ自動車だ。ハイブリッド車という環境配慮型のクルマを開発し、それが日本の販売ランキングの上位にあり、社会から環境にやさしい企業というイメージを持たれている。自社の事業拡大も環境・社会も同じ方向を向いている」

―日本の強みを生かしたSDGsの取り組みは何でしょうか。

「日本には100年以上存続する長寿企業が多い。元々、日本企業は短期の利益を追わず、中長期目線で事業を営む文化があった。SDGsは2030年までの長期目標を定めており、日本企業とは親和性がある。もっと誇りを持って取り組んでほしい。ただ、回帰志向だけではいけない。もっと世界に視野を広げ、新しいことに挑戦し、世界をリードする気概で臨んでほしい」(大城麻木乃)

◇ピーター D.ピーダーセン氏 NELIS代表理事
一般社団法人NELIS代表理事 95年(平7)コペンハーゲン大学文化人類学部卒。同年、来日。00年CSR・環境コンサルティングのイースクエアを共同創業し、11年まで代表取締役社長を務める。デンマーク出身、51歳。

ピーター D.ピーダーセン氏の著書


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SDGs採択に到るまでの背景や、 SDGsの考え方、事業への活かし方を紹介しているほか、SDGsを事業として取り組む際に役立つツール(ワークシート)も掲載。また、企業活動で特に重要な12の目標については、各界の有識者らが詳しく解説する。
 企業事例や造園家の涌井史郎氏による特別寄稿、中井徳太郎・環境省総合環境政策統括官と熊野英介・アミタホールディングス代表取締役による特別対談も収録。巻末に、SDGsの17目標・169ターゲット一覧付き。

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日刊工業新聞2019/年8月5日

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