大麦とホップの変革期、ビールはどのくらいおいしくなる?

ビール原料 北の大地の変革期(上)

 ビール醸造に欠かせない原料のビール大麦とホップ。北の大地、北海道はこの両方を手がける主要産地の一つであり、サッポロビールが設ける原料に関する研究拠点もそこにある。ビールに対する消費者の嗜好(しこう)やニーズが多様化し、新たなビールの形が求められている。これに対応するため、ビール大麦とホップはここにきて大きく変わろうとしている。変革期を迎えたビール原料の今を追った。(編集委員・井上雅太郎)

 2019年夏の北海道・上富良野―。真っ青な大空の下、大きな穂を実らせた麦が金色の絨毯(じゅうたん)のように風にたなびいていた。収穫前を迎えたビール大麦の大海原が広がる。

 毎年見る風景だが、今年はいつもと少し違う。従来、主流だった品種「りょうふう」をサッポロが開発した新品種「きたのほし」に全面的に変更したのだ。品種の入れ替えは実に30年ぶりとなる。

 きたのほしはビール大麦に含まれ、ビールの風味や泡持ちを劣化させる酵素「LOX―1」を持たない“LOXレス”が特徴。サッポロは1万種もある大麦の中からLOXレスの性質の品種を見いだした。これとりょうふうと交配し開発した。遺伝子の突然変異・操作で作り出したものとは異なり、自然特性の品種である安全性も特徴という。

 「サッポロは『協働契約栽培』にこだわる」と北海道原料研究センターの糸賀裕主任研究員は強調する。収穫した原料の品質を確認して購入するのではなく、契約する生産者と品種・栽培方法を事前に話し合い、栽培状況を確認し、品質の良い収穫物を集める。「原料の安全性と品質を産地とのコミュニケーションで確保できる」という。

 きたのほしの商業生産も生産者との試験栽培を経て今年本格導入した。栽培状況について、協働契約栽培を行う富良野ビール大麦耕作組合の猫山晴男組合長は「麦の粒は少し小さめだが、栽培は従来と何も変わらない。麦が割れる裂皮がほとんどないため品質は良好だ」と新品種を高く評価する。

 サッポロはきたのほしのLOXレスの特徴を持つ麦芽「旨さ長持ち麦芽」を原料としたビール「サッポロ生ビール黒ラベル エクストラブリュー」を今夏に30万ケース(1ケースは大瓶20本換算)限定で発売した。

 北海道では富良野と網走地区でビール大麦年間5000トン超を契約栽培し、国内では最大の産地。きたのほしの今年の収穫により20年はLOXレスのビール販売量を大幅に引き上げられる見込みだ。

日刊工業新聞2019年9月17日

  

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