細胞の核を観察できる超高倍率の内視鏡、がん検査を変える!

オリンパスの「エンドサイト」、不要な生体検査の省略に役立つ

 オリンパスの超高倍率の内視鏡「Endocyto(エンドサイト)」は、最大520倍まで拡大できる。病変部の細胞の核を直接観察でき、生体検査の省略に役立つ。全国の急性期病院や一部のクリニックで導入が進んでおり、がん診断以外でも潰瘍性大腸炎の診断など用途が広がっている。同社の人工知能(AI)を搭載した画像診断ソフトウエアもエンドサイトの画像を教師データに使用している。

 「生体内で細胞を直接観察する、というのがもともとのアイデアだった」―。オリンパスの医療国内マーケティング内視鏡営業企画の山下環課長は振り返る。

 内視鏡で見つけた病変をさらに詳細に検査する際、病気か否かを調べるために組織を採取し、数週間かけて病理検査するのが通例だ。病変が見つからなくても念のため検査することが多く、患者と医師の負担になっている。エンドサイトを使用すれば内視鏡医がその場で病変部を詳細に調べることができ、不要な生体検査の省略に役立つ。

 同製品が活躍するのは例えばがん検査だ。消化器でがんが生じると、病変の周囲に血管が集中する。この血管を詳細に見ることで、がんにつながる腫瘍か否か判断できる。同製品は血管をより細かく見るNBI(狭帯域光観察)技術を搭載。同技術はオリンパスが業界で初めて実用化した技術だ。

 波長415ナノミリメートルの青色の光と540ミリメートルの緑色の光で対象を観察し、血液中のヘモグロビンが青と緑の波長を吸収しやすい特徴を利用。血管だけの画像を描出できる。

 520倍というかつてない高倍率を実現するための苦労もあった。「内視鏡下で細胞を見る」というコンセプトに対し「具体的に何倍まで拡大できれば良いか手探りで開発した」(技術開発部門医療第1開発本部の館林貴明課長代理)。倍率が上がれば上がるほど、より高いレンズの加工精度が求められる。そこで生体検査を行う病理医に意見を聞き、実際に必要な倍率を調整した。

 また、最大倍率で拡大するとスコープの先端が粘膜に接触する。このため接触した状態でピントを合わせる技術と、レンズが傷つかないよう保護する技術を両立する必要があった。

 これを工業製品の精度調整に用いる計測機器を用いて解決した。数マイクロメートルの傾きを検知する計測機器の機能で接触面が粘膜と平行になるよう検証し、他社が簡単にはまねできない精度の高さを実現した。

 同製品は内視鏡画像診断支援ソフトウエア「EndoBRAIN(エンドブレイン)」と組み合わせることで更なる強みを発揮する。内視鏡画像をAIで解析し、写っている対象が腫瘍である可能性を数値化して医師を支援する。

 エンドサイトは構想から製品化まで約15年の歳月がかかった分、「完成したときはとても感慨深かった」(館林課長代理)。既存の内視鏡のさらに先を見据えて同社の挑戦は続く。

                   

患者の組織を内視鏡で観察。生体検査を省略できることもある(イメージ、昭和大学横浜市北部病院消化器センター提供)

日刊工業新聞2019年9月16日

  

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