どこまで進化するのかニッポンの内視鏡

次はカプセル内視鏡で消化器疾患の治療へ

オリンパスのカプセル内視鏡
 内視鏡は日本のお家芸といってもよい医療機器である。特に消化器検査で用いられる管が柔らかい軟性内視鏡は、日本メーカーによる独占状態にある。内視鏡は、日本人に多かった胃がんを発見するために、東大病院の宇治達郎医師が光学機器メーカーであるオリンパスに依頼して、1950年代に実用化した胃カメラにその起源がある。その後、光ファイバーを使ったファイバースコープ、さらにCCD(電荷結合素子)を使ったビデオスコープへと進化を遂げている。

 デジタル化と情報処理技術の進歩で、より鮮明な3次元画像として体内を見ることもできるようになった。管の形状や太さ、しなやかさなどを工夫することで、使用領域も、胃から、十二指腸、大腸、気管支などへと広がり、早期診断と疾患の確定に大きく貢献している。すべては胃カメラ開発の依頼から始まったのである。

 一方で、日本企業は硬性内視鏡と呼ばれる、腹腔(ふくくう)鏡や関節鏡の分野では、欧米の手術機器メーカーの後塵(こうじん)を拝している。腹腔鏡下手術は、腹部に通常3個の穴を開けて、そこから鉗子(かんし)や腹腔鏡を差し込み、モニターを見ながら行う手術である。開腹手術に比べ手術の傷が小さく、患者負担が少ない。関節鏡下手術も、同様に関節周囲に穴を開けて行う手術である。日本勢は、発祥が光学機器メーカーということもあり、進化の方向がより鮮明で見やすい画像技術の方向に向かったのは致し方ないかもしれない。

 イスラエルの医療機器会社ギブン・イメージング社(現メドトロニック社)は、内部にカメラを仕込んだカプセルを飲みこみ、無線で画像を体外に送信するカプセル内視鏡を開発、01年に米国で発売した(日本では07年に発売)。オリンパスもカプセル内視鏡を開発し、08年に日本で発売している。

 カプセル内視鏡は外径11ミリ×長さ26ミリメートルで、薬に用いるカプセルよりも一回り大きい。小腸内部など、普通の内視鏡が届かない部位での検査に威力を発揮する。カプセル内視鏡は、小腸の蠕動(ぜんどう)で運ばれるので、向きにより患部を見逃す可能性がある。

 そこで、カプセル内視鏡のなかに磁石を内蔵し、「体外磁場発生装置」により、体外からカプセル内視鏡の向きをコントロールする全方位誘導システムや、薬液放出・体液採取機構を備えたカプセル内視鏡も開発中である。カプセル内視鏡によって消化器疾患を治療する日が来るかもしれない。
(文=旭リサーチセンター主幹研究員・毛利光伸)

※日刊工業新聞では「医療機器新事情」を毎週火曜日に連載中

日刊工業新聞2015年09月15日 ヘルスケア面

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

機器メーカーの出発点によって技術の方向性が違うのはとても興味深い。あとはその国や地域における医療・手術の文化によっても変わってくる。今はプレゼンスの高い日本勢も、自社での開発だけでなく、こまめに世界中からユニークなテクノロジーを持つベンチャーを青田買いし、次の種を逃さないようにしないと。

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カプセル内視鏡

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