世界で通用する意外なハイテク医療機器とは?

注射針は微細な芸術品は痛みを減らす工夫も

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採血用穿刺器ピンニックスライト
 日本の医療機器の中で国際競争力の高いものは何か。意外なことに、注射針がコンピューター断層撮影装置(CT)や内視鏡と並んで高い競争力を持っている。2013年には約46億本の注射針が輸出された。なぜ日本の注射針が高い競争力を持つのだろうか。

 年配の人は気付いているかもしれないが、最近の注射は昔ほど痛くない。特にインスリン用の注射針は、1日に何回も自分で注射しなくてはならない。糖尿病患者の注射への抵抗感をなくすため、痛みを減らす多くの工夫が施されている。

 注射針は皮膚を刺すときの抵抗が少ないほど痛くない。注射針は中空のスチール管から作られる。より鋭利な刃先とするために、刃先の削り出し方法を工夫し、管を細く肉薄に、それでいて強度を保つために根本を太く、先を細くする。さらに滑りを良くするためのコーティングを施す針もある。日本の注射針は、高い微細加工技術が生かされており、そんな芸術品ともいえる注射針を大量に安く生産できる。それが高い競争力の理由である。

 ところで、蚊は人に気付かれず針を刺し、血を吸って飛び去る。なぜ蚊が刺しても痛くないのだろうか。蚊の血を吸う針(口吻〈こうふん〉)の形状を観察すると、ギザギザがついており、このギザギザが皮膚を刺す針の抵抗を少なくしていることが分かった。

 兵庫県西宮市の医療機器ベンチャー、ライトニックスは刃先にギザギザを加えた植物性プラスチック製の針を使用した「採血用穿刺(せんし)器ピンニックスライト」を開発した。糖尿病患者は血糖値を測定するために血液を採取するが、その時の痛みを軽減できる。指先に軽く押しあてると、針が飛び出し指先に刺さり、採血できる仕組みだ。

 また、金属を一切使っていないので焼却処分が可能で、金属製の針を燃えない医療廃棄物として分別する煩わしさと、廃棄の際、誤って針で指を刺してしまうことによる感染の危険性を減らすことができる。すでに12年に日本での薬事承認を取得し、10万本以上が販売されている。米国食品医薬品安全局(FDA)の認可も得て、米国でも販売を始めた。ライトニックスは、ワクチン用の注射針も開発中だ。

 注射針のような汎用機器でも、患者や医師などの使用者に優しい工夫を施すことで、国際競争力を持つことができる。ライトニックスのような医療機器ベンチャーが次々現れることを期待したい。
(文=旭リサーチセンター主幹研究員・毛利光伸)

 ※日刊工業新聞では「医療機器新事情」を毎週火曜日に連載中

日刊工業新聞2015年08月25日 ヘルスケア面

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

今日アップされている医療領域のルールチェンジにもつながるが、ハードウェアでもベンチャーがどんどん出てきて欲しい。IoTとの親和性も高い。

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