経産事務次官インタビュー「(韓国が)グループAに戻る風景はまったく見えない」

安藤久佳氏、グローバルSCM問題で世界の企業は騒いでいない

 産業界の先行きに暗雲が漂っている。米中対立の激化に伴い、世界経済に景気後退の兆しが出てきた。また韓国に対する貿易管理の運用見直しを契機に、日韓の間でも確執が深まり、経済交流が冷え込んでいる。7月に就任した安藤久佳経済産業事務次官に喫緊の政策課題を聞いた。

 ―対韓貿易管理の運用見直しをめぐり、韓国が反発を強めています。
 「今回の措置は、貿易管理の国際的なルールの中に完全に収まっている。このルールを逸脱し恣意(しい)的に運用すると、国際的なプロの世界で一目瞭然になる。長年にわたる日本の信頼を傷付けるような自殺行為は、政府として絶対に行わない。どんな場に出ても適切に説明できると確信している」

 ―半導体材料3品目の輸出手続きを厳格化しました。産業界への影響をどう見ますか。
 「韓国は半導体のグローバルサプライチェーンが毀損(きそん)し世界規模で連鎖反応が起きると主張しているが、韓国のサムスン電子や米アップルなどが懸念しているという情報は来ていない。調達や製造に影響が出るなら黙っていないはずだ。輸出許可をされるべき案件は粛々と許可されることを世界のトップ企業は分かっているから、大騒ぎしていない」

 ―厳格化する対象品目を広げる考えは。
 「必要があれば、でしょうね。3品目と同様に不適切な事例が見受けられるなら考えないといけない。そこは予断を持って考えているわけではない」

 ―韓国が以前の輸出管理区分(グループA)に復帰する可能性はありますか。
 「グループA(の実務実態)の状況になったという証拠と、そういう体制を継続できるという信頼性を示して頂く必要があるほか、我々自身の心証の問題もある。だが7月の事務的説明会以降の動きは、まったく逆行しているように見える。今のところグループAに戻るというような風景は、私自身はまったく見えない」

 ―一方、通商の世界では米中対立の先鋭化が世界景気の足かせになっています。
 「中国経済の減速により、日本からの輸出や現地での供給に影響が出ている。特に電子機器や産業機械が中心だ。また鉄鋼や化学の過剰生産能力問題が深刻化し、アジア全体の市況が悪化する恐れもある。9月に対中制裁関税の第4弾が発動されると、さらに大きな影響が及ぶだろう」

【記者の目】
 韓国政府は日本の貿易管理上の措置を歴史問題にすり替えて反論している。日本は欧米など国際社会に対して積極的に情報発信し、正しい理解を広げるべきだ。また長い目で見れば、韓国国内における世論形成も必要だ。日本に対して好意的な層や寛大な層も少なからずいる。彼らとも連携し、日韓は歩み寄りの機会を探れるのか、壁は高い。
(敷田寛明)


日刊工業新聞2019年8月20日

  

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