AIの研究を推進する上で俳句がよい題材になる深い理由

北海道大学大学院情報科学研究院教授・川村秀憲氏インタビュー

 人工知能(AI)について、さまざまな分野で社会実装に向けた取り組みが活発化している。こうした中、北海道大学大学院情報科学研究院の川村秀憲教授は、数多くの企業と共同研究を進めているほか、AIを使って俳句をつくる「AI俳句」の研究にも力を入れている。北海道でのAI研究をリードし、多くの課題に取り組む川村教授に研究の狙いや方向性を聞いた。

 ―企業との共同研究に積極的ですね。
 「常に10社ぐらいとやっている。長期的に考えると、国のプロジェクト頼りでは採択されないリスクがある。企業と共同研究することで、生きた課題に取り組め独自のデータも扱えるほか、研究費も提供してもらえる。成果はビジネスに生かされ世の中に出ていく。その課程で学生教育もできる利点がある」

 ―どのような研究分野がありますか。
 「例えば、ファッションを理解するAIや、ラジコンカーを用い多くの車両がスムーズに自動運転するための研究も行っている。競輪の結果を予測する記事の作成や、効果的なロードヒーティングの実施などもある」

 ―「AI俳句」を研究しています。
 「AIで俳句を作ることが目的ではなく、研究を進めるための一つの切り口だ。俳句を理解するということは人の価値観や生活、人生などを理解できるということ。AIがそれをできたらほとんど人と同じ能力を持っていると言える」

 ―AIと俳句の組み合わせは意外です。
 「AI研究は工学の専門家だけになりがちだが、AI俳句をやることで俳句を詠む人たちと関わり、議論する中で気づきがある。俳句の善しあしは人間の中にしか正解がない。俳句はAIにとっていい研究題材だ」

 ―現在はAIでどの程度の俳句ができるのですか。
 「過去の俳句をディープラーニングで学習させ、言葉のつながりを作る中で、俳句のようなものができているという状況だ。人が言葉をどう考えているのか、何をどう伝えているのか、価値観とは何なのか、これらを理解できるようなAI技術の開発を進めたい」

【記者の目/“人”の可能性を再発見】
AIの活用ニーズはさまざまな分野に広がっている。川村教授は多くの企業と共同研究しており、その成果の普及が期待される。一方、AI俳句の研究は人間を理解するという意味で奥が深い。AIが人間に置き換わるという視点で論じられることが多いが、AI俳句の研究では、人間の可能性を再発見できるのではないか。(文=札幌支局長・村山茂樹)

日刊工業新聞2019年8月22日

  

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