資金をかけずに「SDGs」を導入した造園業者が実現したこと

日比谷アメニス、環境宣言を自前で策定

 中小企業の多くが持続可能な開発目標(SDGs)を経営に活用する上でコストを課題と感じている。ただ、SDGsの推進に決まり事はなく、資金をかけずに導入できる。造園業の日比谷アメニス(東京都港区)は、コンサルタントなどに頼らず自前でSDGsを取り入れた環境宣言を策定した。従業員500人の同社にCSR専門部署はなく、多くの企業が参考にできそうだ。

業務別に目標設定、一覧に


 日比谷アメニスの環境宣言が記載されたパンフレットを開くと、同社グループとSDGsとの関係を一覧できる。業務別にSDGsの17目標が整理され、取り組むと好影響、注意を怠ると悪影響を与える目標も分かる。1枚にまとまっているので携帯しやすく、そのまま壁に掲示できる。同社は自前で作った。

 環境宣言の策定作業は2017年夏に始まった。環境緑花研究室の上杉哲郎室長は「造園業なので環境に関わるのは当然だが、もっと明確に環境貢献を発信しようとなった」と経緯を語る。事業の社会的価値の再確認などの狙いもあったが、発信によって同業者との差別化や新たなパートナー獲得につなげようとするビジネス上の動機も大きかった。 

 宣言は、十数人で立ち上げた委員会で検討した。委員長は工事部の課長、他のメンバーも現場社員だ。検討過程でSDGsに着目するようになった。SDGsに当てはめると、活動が社会的要請に合っているのか確認できるからだ。委員会メンバーは社外のシンポジウムや勉強会に出かけて関連情報を収集。建設業者や取引先、先進的と言われる企業のホームページも見てSDGsの活用例を学習した。18年8月、委員会で練った環境宣言を小林定夫社長が社員向けに公表した。

環境宣言のパンフレットと上杉室長。SDGsとの関係が一覧となっている

 現在、建設業とSDGsとの関連に詳しい専門家を招いた社内勉強会を開いている。「具体的に何をしたら良いのか、ヒントを得るため」(上杉室長)という。SDGsに取り組む初期段階で講師を招いた研修会を開く企業が多い。目標設定でコンサルタントによる指導を受ける企業も珍しくない。日比谷アメニスは勉強や目標づくりで自前を貫いたが、実際の活動に移す段階で必要に応じて外部に頼る。「宣言をして終わりではない。活動の方が重要」(同)とメリハリをつける。

事業に直結する目的を


 関東経済産業局の18年10月の調査によると、中小企業のSDGsの認知度は15%だった。SDGs推進の課題では「資金不足」「マンパワー不足」「何から取り組んでいいのか不明」という回答が多かった。

 日比谷アメニスでは、資金をかけずにSDGsを経営に導入した。また社員が参加する委員会活動にすることで人材不足も補った。SDGs推進の目的も明確だった。

 「社会の流れだから」と漠然とした理由ではなく、同業者との差別化やパートナー獲得などの具体的なメリットを意識していたので、委員会メンバーが情報収集に取り組む動機付けになった。事業に直結する目的があると、社内でSDGsを推進しやすい。

日刊工業新聞2019年8月9日

松木 喬

松木 喬
08月23日
この記事のファシリテーター

8月9日付「SDGs面」から。費用をかけず、社内にSDGsを浸透させた事例です。以前、パンフレットを見せてみただいた時、個性的と感じていました。その答えが今回の取材でわかりました。大手企業のSDGsの示し方は統一的すぎる気がしませんか。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。