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アパレル倒産、ニットで装った偽りの好業績

クレッシェンド、業態転換で経営は揺らぐ
 クレッシェンドは、1994年6月に大阪府南部の和泉市でニット製造業者の共同販売会社として設立。地場製品の販売を行っていた。しかし、設立から数年後、中国など海外から安価な製品が流入し、価格面で対抗が難しくなる。

 地元業者との結びつきも薄れ、ただの共同販売会社だった同社は製造原価を抑える目的で、2001年頃から中国で生産を開始。製品を輸入して販売する業態へシフトしていった。

 輸入資金などを銀行から借り入れ、その後、業容を拡大。04年には福岡や東京に営業所を開設し、ピークとなる06年5月期には年売上高約28億5300万円を計上。07年には小売りも始め「LYRIX」の店名で6店舗を出店していた。

 しかし、リーマン・ショックを機に経営環境が悪化。個人消費の冷え込みとファストファッションの台頭で、主要顧客であった大手総合アパレルの業績が落ち込み同社は窮地に立たされる。

 さらに11年には東日本大震災が発生。売り上げは減少を続け、17年5月期は約7億2600万円と、ピーク時から10年で4分の1程度にまで縮小していた。

 一見、外部環境の悪化が経営不振を招いたようにみえるが、実際は海外生産の開始という業態転換から経営は揺らいでいた。破産申立書によると、05年5月期に約1200万円の最終赤字が発生したことで当時の経理担当者は金融機関からの融資が得にくくなったと感じ、それ以降は不適切な会計処理で黒字決算を装っていたという。ニット製品の特性上、受注の段階で資金調達ができなければ、資金繰りが直ちに破綻するという状況があったためだ。

 偽りの好業績を背景に事業を続けてきたが、17年末ごろに金融機関へ支援を要請。大阪府再生支援協議会の援助のもと、再建計画を策定して業績改善に努めたものの、今年4月末の段階で売り上げ目標を大幅に下回り、再建のめどが立たず6月4日に大阪地裁へ自己破産を申請した。
(文=帝国データバンク情報部)
(株)クレッシェンド
住所:大阪市西区西本町1―9―14
代表:松本裕之氏
資本金:1000万円
年売上高::約7億2600万円(17年5月期)
負債:約10億円
日刊工業新聞2019年8月20日

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